市場には5つの脅威が待ち受ける 〜ファイブフォース分析〜

市場で競争せずに勝つ方法

5つの視点で市場を攻略

世の中には儲かりやすい構造の業界もあれば、儲かりにくい構造の業界もあります。国家が立地する場所によって、地震などの自然災害や紛争、対立の脅威に晒されるのと同じ道理です。

企業同士がひしめき、お互いに競ってお客様を奪いあう状況を競争構造といいます。

ファイブフォース分析は、競合、買い手、仕入れ先、新規参入、代替品の5つの視点から自社が属する業界の競争構造を見極め、業界で競争優位を確立するための戦略の土台です。

『ファイブフォース分析』とは?
 競合、買い手、仕入れ先、新規参入、代替品の5つの視点から自社が属する業界の競争構造を見極め、業界で競争優位を確立するための戦略の土台

実は、この5つの視点が、利益を奪う競争要因という名の脅威です。競合が数社ならば利益を得やすいですが、完全競争下で競合が多ければ多いほど利益が低くなります。

しかも、どの業界も買い手仕入れ先なしに存続は有り得ません。それだけに両者間では利益の駆け引きがあり、時として買い手と仕入れ先の要求が脅威になります。

当然、自社の業界が儲かる構造であれば、利益を得ようと新規参入を目論む企業が出現し、脅威として立ちはだかります。

さらに、フロッピーディスクが不要になったように、市場でシェアを誇る製品と同等あるいはそれ以上の機能や価値を持つ代替品が登場すれば業界全体の利益が奪われてしまいます。

利益を守るには、競争に打ち勝つ戦略が必要です。ファイブフォース分析の生みの親であるマイケル・ポーター(1947-)は、著書『競争の戦略』の中で、こう説いています。

競争戦略とは、業界内で防衛可能な地位をつくり、5つの競争要因にうまく対処し、企業の投資収益を大きくするための、攻撃的または防衛的アクションである

儲かりにくい業界の中にも高収益企業は存在するし、高い利益水準の業界でも低迷する企業が存在します。明暗を分けるのが競争戦略です。 

5つの競争要因に対処する武器が、自社が持つ資金、専門知識や技術を持つ人材、設備といった経営資源です。攻守両方の場面での経営資源の適切な活用は、業界内で優位性を築く源泉になります。

ノドを守る会社の攻めの経営に学ぶ

戦略とは「戦いを略す」。競争戦略の本質は競争しないことです。競争戦略の本質は、競争に巻き込まれずに、自社の強みや独自性を活かして市場での地位を確立することにあります。

「ゴホンといえば龍角散」でお馴染みの製薬会社の老舗 龍角散は、『真似されず、真似せず』の理念の下で、のどをスッキリさせることのみに経営資源を集中し、競合が真似のできない価値をお客様に届けています。

強みを活かした製品とブランド戦略、お客様や仕入れ先との良好な関係づくりという龍角散の攻撃的ディフェンスのお手本のような経営手法は、長期的な競争優位性と利益を維持する鍵といえます。

コラム 「スターウォーズ』とフォース
  多くの人は、フォースということばから『スターウォーズ』のフォースを想起するでしょう。字幕翻訳者の岡田壮平は、フォースを理力と訳しました。

ジェダイは穏やかな感情から生まれるフォース。シスは負の感情から生まれるフォースと、同じフォースでも2者には大きな違いがあります。さらに双方の武器 ライトセーバーの原料であるクリスタルは希少な資源です。『スターウォーズ』は、銀河を市場に例えるなら舞台にしたフォースの差異を巡る市場の覇権争いと資源の争奪を描いた物語です。

参考文献

マイケル・ポーター『競争戦略論』(ダイヤモンド社)

マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社)

今枝 昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)