競争は価値こそが勝ちである 〜ポーターの競争戦略〜

マーケティングをわしづかみ

違いで勝負することの真の意味

ポーターの競争戦略は、マイケル・E・ポーター(1947-)が、生み出した業界内で競合に勝つためのコストリーダーシップ戦略差別化戦略そして集中戦略という3つの型です。

1.コスパで勝負

コストリーダーシップ戦略

競合よりも高いコストパフォーマンスで収益性を高める

2.違いで勝負

差別化戦略

競合とは異なる製品やサービスを届ける

3.ニッチで勝負

集中戦略

特定のターゲットに絞り込んで製品やサービスを届ける

競争戦略の要諦は、競合他社との違いを、はっきりさせることです。しかし、それだけでは不十分です。持続的に利益を確保するためには、お客様に他社よりも価値があると感じさせることが必要です。

インネパ店の成功に学ぶ

ネパール人が経営する“インネパ”と呼ばれるインド料理店は、全国で店舗数が2,000から3,000店といわれています。

北インドや南インド料理専門店とは一線を画し、日本人の味覚にマッチしたインド料理を、低価格で提供する店というポジションを貫いています。

大多数のインネパ店は、バターチキンカレー、タンドリーチキン、ナンの食べ放題を定番メニューにしています。

しかし競合が増える中で、バターチキンカレーとナン食べ放題だけでは、差別化が難しくなってきます。多数乱戦業界で他店に勝つための戦略が必要です。

コストリーダーシップ戦略は、CoCo壱のようなチェーン店では、効率的な運営によってコストを下げ、お客様にリーズナブルな価格で競争力を発揮することができます。インネパ店のような個人経営では、価格競争は疲弊を招きます。

「ネパールの料理が食べたい」というお客様の声に耳を傾け、ネパールの定食ダルバートやタルカリ、モモなど自国のディープなネパール料理をメニューに加えることで、差別化を図る店が増えています。

日本人の味覚に合わせたインド料理と、本格的なネパール料理の両方を愉しめる選択肢で、お客様に、より幅広い食の体験を届けることができます。

また野菜を豊富に用いたネパール料理は、ベジタリアンやビーガンというニッチをターゲットにした集中戦略が功を奏する浸透する可能性を秘めています。

ネパール料理店の草分け 東京新大久保の『モモ』は、「日本初・本格ネパール料理の店 甘口から激辛までのスパイス料理店」と他店との違いを、明確に謳い人気を呼んでいます。

これまでインド料理のドーサやビリヤニ、タイ料理、ベトナム料理とメニューを広げ飽和状態の中、掘り当てた鉱脈が「これまで売れない」と思っていた自国の料理でした。

生き残りを賭け、異国の地で、厳しい競争を続けるネパール人たちの知恵に、お客様に真の価値を届け長期的な利益を得る競争戦略のヒントがあります。