経営資源を効果的に配分し成長を遂げる方法
成長戦略の選択肢
アンゾフの成長マトリクスは、市場と製品を軸に据え、複数の市場での経営資源を効果的に配分し、成長を促進するための4つの戦略です。
戦略は、市場の選択から始まります。そして戦略を支える要素がヒト・モノ・カネ、つまり経営資源です。限りある経営資源を、市場間で効率的に活用するための配分(リソースアロケーション)が、成功のカギです。
市場浸透戦略と製品開発戦略は、既存市場・既存製品を基盤に、自社の強みを活かせる市場に資源を集中し、収益を増やし成長を図る戦略です。
一方、高い投資とリスクが伴う市場開拓戦略と多角化戦略は、冒険的なアプローチといえます。
1.市場浸透戦略 小リスク小リターン |
既存市場で、既存製品の購入頻度を高めるために資源集中し、収益の安定的な拡大を図ります。小さなリスクで確実なリターンが期待できます。スターバックスコーヒーの「One More Coffee」は、特別価格で2杯目を提供し、1日の購入回数を増やす取り組みです。 |
2.製品開発戦略 小リスク中リターン |
既存市場に、新しい製品やリニューアル品を投入して収益を増やす方法です。比較的少ないリスクで中程度のリターンを期待できます。。アサヒのマルエフを35年ぶりに商品を刷新、ワイルドビートを限定復刻し新しい顧客層を魅了しました。 |
3.市場開拓戦略 中リスク高リターン |
未開拓の地域や顧客層など新しい市場に既存製品を展開して成長を実現します。ただし中程度のリスクと高い投資が伴います。ワークマンの「#ワークマン女子」ブランドは、作業服市場から婦人服市場への市場開拓戦略の成功事例です。 |
4.多角化戦略 高リスク高リターン |
未知の市場に新しい製品を導入し、高いリスクを冒しながら新たなビジネスチャンスを追求し、高いリターンを狙う戦略です。DHCは、翻訳業から美容通販市場へ進出し、多角化戦略を成功させました。 |
成長マトリクスを通じて、企業は、どの市場でどれだけの資源を使うべきかを戦略的に検討できます。自社でしか生み出せない独自の能力や資源、つまり組織能力(OP:オーガナイゼーショナルケイパビリティ)を、活かせる市場で競争優位を築くことが可能です。
経営資源に制約のある中小企業は、リスクの少ない既存市場で基礎固めを行い、徐々に拡大を図ることが最適です。
また成熟期に入り、頭打ちになった際に、成長マトリクスを通じて、新たな成長機会を見つければ市場の変化に適応していくことができます。
資源配分の重要性
成長マトリクスの要諦は、限られた経営資源を最大限に活用し、市場間で柔軟に融通しあい成長を拡大することにあります。
成長マトリクスは、成功した市場で得た収益を活かし、新しい市場への投資に余剰資源を振り分けるなど、市場の動向や競合の状況に応じて戦略を調整し、成長の機会を追求します。
また、新規市場への進出が成功しなかった場合、迅速かつ適切にリソースを他の市場に再配置し、改善や修正を行うことで、過去の失敗を修正し、成長の軌道に戻すことが可能です。
経営資源の効果的な配分と柔軟な市場適応を両立させた戦略を構築することで、企業は持続可能な成長を達成できるでしょう。
同社では、「Soup for all!」の理念のもと、咀嚼配慮食で介護に取り組むなど、社会的責任を果たすために「既存商品×新市場」を軸に市場拡大に取り組んでいます。
大前研一『企業参謀』(講談社)
今枝昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)
フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティングマネジメント」(丸善出版部)