「みんなと一緒なら安心」これが、売れるバズワード
他者の意見に依存する我が心
社会的証明の原理は、人が他人の意見や行動に影響を受けやすいという行動心理です。

「おいしい店か? まずい店か?」は、自分自身の舌で判断すればよいことです。
しかし、自分の判断に自信が持てない時にあなたは、「飲食店人気ランキング」を頼ることがあるはずです。その理由は、多くの人が選んでいるという情報が安心感をもたらすからです。
この瞬間に、あなたに限らず人の心は社会的証明の原理に振り回されているのです。
世の中の流れと個人の感性のせめぎ合い
陶芸家の河井寛次郎(1890-1966)のことばです。
物買って来る 自分買って来る
河井寛次郎
河井寛次郎の言うように、自分が購入すべきものは、自分自身の感性に合ったものです。
とはいうもの感情が理性を上回ることがあるのが人の心です。社会の自流に身をまかせ、多数の選択に引きずられ、みんなが支持する商品を選ぶ同調心理は、人間の本質なのかもしれません。
人々の価値観が変わり消費スタイルも多様化しています。しかし日本では他人の評価を尊重する文化が根付いています。だから「当社売れ筋NO.1」といったことばに、お客様はつい心を奪われてしまいます。
マーケティング視点で考えると、消費者心理と文化的要素は収益を向上させるカギです。社会的証明の原理を活用した販売施策は、収益を増加させるための有効な施策といえましょう。
なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う。
小津安二郎は、芸術のことは自分の信念に従い、低い位置にカメラを据えるスタイルを貫き『おはよう』ではテレビを親にねだる子供たち、『秋刀魚の味』では電気洗濯機に憧れる若夫婦の姿を追います。昔も今も「みんなが持っているから」と流行に乗ろうとする日本人の気質は変わりません。
ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)
オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(岩波書店)
山本七平『空気の研究』(文藝春秋)
中野信子『脳はどこまでコントロールできるか?』 (ベストセラーズ)