4倍の 利益も決して 夢ではない!
〜デザイン経営〜

デザイン経営

経営の中核に“デザイン”を据えた成長戦略に注目

デザインが生む競争優位

デザイン経営は、デザインを経営戦略に組み込み、新しい価値を生み出し競争力を高める手法です。

『デザイン経営』とは?
デザインを経営戦略に組み込み、新しい価値を創出し競争力を高める手法

デザイン経営の目的は、イノベーションとブランディングの力で競争優位を築くことにあります。

デザイン経営のデザインは、色や形などの見た目だけでなく、製品・サービスの競争優位に必要な差異を生むのに必要な力を意味します。

イノベーションは、顧客の視点から問題を発見し、既存の要素を組み合わせ、新しい価値を生み出すプロセスです。この新しい価値は、社会を変え人々に行動変容を起こします。

イノベーションをインベンション(発明)と混同しがちですが、イノベーションの提唱者 ヨーゼフ・シュンペーター(1883-1950)は、イノベーションをこう定義しています。

これまで組み合わせたことのない既存の要素を、組み合わせる結合によって新しい価値を創造する既存のもの同士の結合によって、新しい世界を見い出すこと。

ブランディングの目的は顧客に「あの会社の商品だから大丈夫だ」と信頼してもらうことです。

デザイン経営の第一人者 永井一史(1961-)は、著書『これからのデザイン経営』の中で、次のように述べています。

デザインはカタチを整えるだけのものではありません。企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志、そのような思いを具体的なカタチに落とし込み、それをあらゆる顧客接点において一貫したイメージとして伝えていくことで他の製品やサービスには代えられない価値を作り上げることができます。 

企業の思いをストーリーのようにわかりやすく伝え、あらゆる顧客接点で一貫したイメージを作ることで、競合との差異を打ち出し、代替不可能な価値=競争優位を生むことが可能になります。

可能性の 種を育てる デザイン経営

2018年に経済産業省と特許庁が発表した政策提言『「デザイン経営」宣言』には、デザインに投資することで、4倍の利益が得られたというイギリスの成功事例が紹介されています。

経済産業省・特許庁『デザイン経営』宣言

この成功は、デザイン経営のデザインを理解し実践した企業が、デザインを通じたイノベーションとブランディングの力で、機能や価格以外の競争優位性を、顧客にアピールできた結果といえます。

『中小企業のためのデザイン経営ハンドブック みんなのデザイン経営』PDF版

デザインへの投資は、直ちに利益をもたらすわけではありません。しかし、経営資源の一部をデザインに投資することは長期的な成長に向けた重要な手段となります。

コラム 柿の種×ピーナッツ 宇宙へ飛び立つ!
 亀田の柿の種(柿ピー)は、亀田製菓が1966年に発売した米菓売上No.1商品です。同社は柿の種では後発参入企業です。先行する競合との差異を打ち出すために、柿の種にピーナッツを配合します。柿の種×ピーナッツという掛け合わせは、イノベーションを生み、人々の心を捉えます。

発売以来、商品ラインナップを増やしますが、一貫して柿の種の形状は変えず、パッケージカラーを赤い帯とオレンジ色に統一しています。亀田の柿の種は時代を超えて愛され続けインドなど海外にも進出します。2020年12月8日、宇宙食に採用された柿ピーは、地球を飛び出して国際宇宙ステーションに到着しました。


参考文献

永井一史『これからのデザイン経営』(クロスメディア・パブリッシング)

片平秀貴・古川一郎・阿部誠『超顧客主義 顧客を超える経営者たちに学ぶ 』(東洋経済新報社)

トニー・ファデル『BUILD真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』(早川書房)

経済産業省『第4次産業革命におけるデザイン等のクリエイティブの重要性』

経済産業省・特許庁 産業競争力とデザインを考える研究会『「デザイン経営」宣言』

特許庁『中小企業のためのデザイン経営ハンドブック』

経済産業省『我が国の新・デザイン政策研究 ~海外のデザイン政策動向・教育事例調査、デザインが企業経営に与える効果の先行研究レビュー』