他社にない価値を創って利益を掴む〜バリュープロポジション〜

競合他社との“違い”を、お客様に届けて利益につなげる

バリュープロポジションとは?

バリュープロポジションとは、企業がお客様に届ける独自の価値。しかも自社のみが作り出せる競合他社が真似のできない価値のことです。

『バリュープロポジション』とは?
 企業がお客様に届ける独自の価値。自社のみが作り出せる競合他社が真似のできない価値

市場には、似たような製品が溢れています。「自社の提供価値がお客様の眼にどう映っているか?」という視点を忘れるとマーケティング・マイオピア(近視眼)が生じます。お客様の脳内に「おっ、これはいい」とマイベストの地位を築く価値でなければいけません。

マーケティング・マイオピアを主張したアメリカの経営学者 セオドア・レベット(1925-2006)は、マーケティングの有名な格言を残しています。

ドリルを売るな 穴を売れ


お客様が望んでいる価値と、競合が真似できない自社だけが持っている価値の2つが揃うことでバリュープロポジションが成り立ちます。

巴裡 小川軒は、新橋と目黒に店を構える元祖レイズン・ウィッチや小川軒ロールでおなじみの行列の絶えない洋菓子店です。


これがレーズン・ウィッチなど人気のお菓子のバリュープロポジションです。

巴裡 小川軒では、旬のフルーツを信頼できる農家と直接契約し、毎年、一定数量を安定的に確保。商品の安全性やお客様への商品説明に、責任を持って対応しています。

巴裡 小川軒のように、自社の製品が、他とどんな点が異なり、なぜ選ばれるのかをはっきり伝えることが重要です。

なぜなら、競合との違いがお客様が商品を選ぶ理由となるからです。お客様は、安心して食べることができる美味しいお菓子を求めているからこそ行列をしてでも巴裡 小川軒を選ぶのです。

競争戦略への応用

中小企業は、経営資源に限りがあります。大企業と同じ土俵では勝てません。無料お試し体験や値下げキャンペーンは、経営資源が潤沢な大企業だからできる施策です。生き残るためには戦略が必要です。

競争戦略の権威 楠木建(1964-)は、『ストーリーとしての競争戦略』で、このように主張します。

競争のある中で、いかに他社よりも優秀な収益を達成し、持続させるか、その手立てを示すものが競争戦略です。

似たような製品やサービスが溢れる中で、お客様が注目するのは、“違い”です。競合他社との“違い”つまりバリュープロポジションこそが、利益を生み出す源泉です。

企業は、お客様が求める価値を届けることで利益という価値が得られます。人・技術・資金など経営資源の強みから生まれる価値が、競合他社とどのように違うのかを、はっきり打ち出すことが成功の鍵です。

コラム  リングの上で最後に笑って立っている奴の名は?
  1996年にデビューした女子プロレスラー 広田さくら(現:旧姓・広田さくら)は、デビュー当時、自分の思うような戦い試合が出来ずに壁に直面します。同じスタイルで戦っても同年代の里村明衣子や師匠の長与千種ら一時代を築いたレジェンドには敵いません。

「同じ土俵に上がらずに、ライバルと違う土俵を作るためにはどうすればよいか? 」を考えた答えが、お客様を愉しませるパフォーマンスです。マイクアピールやコスプレ、バリュープロポジションのお手本のようなロープ渡りやボ・ラギノール、高田純次など独特の技がお客様を虜にします。師である長与から叩き込まれた相手の技を受ける技術を凝縮した価値が、会場に足を運んでくれたお客様すべてを笑顔にする“サクパラダイス”というポジションを確立したのです。

参考文献
 

西口一希『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)

今枝昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)

楠木建『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)