消費者の欲求射抜く 2つの眼〜4Pと4C〜

お客様と価値を共創して収益に繋げる法

4Pは収益を生むための出発点

4Pは、ビジネスの基本である「お客様に商品を購入していただくために何をすべきか?」を考えるためのツールです。

経営戦略の根幹は、顧客に価値を提供し、顧客を獲得・維持し収益を上げることです。

この戦略を支える戦術が、4Pとして知られるマーケティングミックスのProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)です。

『4P』とは?
 お客様に商品を売る時に必要な4つの要素

Product製品どんな商品なのか?
Price価格いくらで売るのか?
Place流通どこでどう売るのか?
Promotion宣伝どう伝えるのか?

4Pの要諦は、このような価値を持つ商品(Product)を、どのくらいの価格(Price)に設定し、どのような販売方法(Place)で、どのように宣伝(Promotion)して売るかです。 

しかし、4Pは“誰に”、つまりお客様(Consumer)という主語が欠けている点に注意が必要です。

お客様と価値を共創する

マーケティングの本質は、お客様の欲求を満たす魅力的な商品を市場に投入し、収益を生み出すことです。

イトーヨーカ堂、セブンイレブンの創業者 伊藤雅俊(1924-2023)のことばです。

お客様だったらどう考えるか、何をお求めなのか、値段、品質、味、サービス、いずれもお客様の立場に立って考えれば何が必要かわかるはずです。


商品やサービスの価値は、お客様が利用することで初めて実現します。4Cは、その実現に向けて、お客様という主語が抜け落ちた4Pを、お客様中心の視点に反転させたツールです。

4Pを、お客様の視点で考えると、Customer Value(価値)・Cost(コスト)・Convenience(利便性)・Communication(対話 )の4Cになります。

『4C』とは?
お客様が商品を買う時に感じる4つの心理的要素

Customer Value価値お客様にとっての便益
Costコストお客様にとっての時間・労力・心理的負担
Convenience利便性お客様にとっての買いやすさ
Communication対話お客様にとっての情報発信

4Cの要諦は、お客様にベネフィットという価値(Customer Value)を、時間、労力、心理的負担(Cost)を掛けずに、購入しやすい方法(Convenience)で手に入れていただき、購入後も、コミュニケーション(Communication)を取りながらお客様と企業が共に価値を創り出すことです。

4Cは、お客様の立場で価値を提供する新しいマーケティングの考え方 サービス・ドミナント・ロジックに合致しています。

セブンイレブンは、お客様の立場に立った価値を追求し、仮説検証型発注を導入し、欠品による機会損失のリスクを軽減し、100円コーヒーやATMの設置など、お客様の要望に応えるサービスを打ち出し流通業界で堅固なポジションを築きました。

お客様にベネフィットを提供し、購入プロセスを簡素化し、コミュニケーションを通じてお客様と企業が価値を共創し合う関係を築くことが戦略の理想形です。

4Pと4Cは、フィルムのネガとポジのような関係です。2つを組み合わせれば、お客様との強固な関係を構築し、収益を最大化するための強力な基盤となります。

コラム  クルマを手放す時代到来⁉︎
  ITやAIの進歩、人々の価値観の変化により、ビジネスモデルや収益構造が大きく変わろうとしています。自動車に目を向けるとMaaS(Mobility as a Service)の登場により、マイカーを持たなくても気軽に移動できる環境が実現されます。

メーカーは、自動車製造業からモビリティ・カンパニーへの転換が迫られています。この変化は他の産業にも及ぶ可能性があります。未来を見据えた戦略に必要なのは4Pと4Cによる分析です。消費者の欲求を射抜くには、お客様との関係性を重視したアプローチが不可欠です。

参考文献
 

フィリップ・コトラー他『フィリップ・コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版)

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティングマネジメント」(丸善出版部)

ヤン・カールソン『真実の瞬間―SASのサービス戦略はなぜ成功したか 』(ダイヤモンド社)

バーント・H・シュミット『経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力』(ダイヤモンド社)

山口周『ビジネスの未来』(プレジデント社)