「そんなバカな」「なるほど」経済圏の正体
「数学の『圏論』を使えば、経済圏が作れて利益が上がる」と言われたら、きっと誰もが「そんなバカな!」と思うでしょう。しかし、楽天やドコモが進める「経済圏」の正体は、実は圏論の基本である「点」と「矢印」だけで説明がつきます。
経済圏を作る3つの矢印
経済圏とは、お客様がどの状態(点)にいても、自社サービスへとつながる矢印が用意されている構造のこと。では矢印を、おなじみのアップセルとクロスセルという言葉に置き換えます。
- アップセル(長い矢印): 現在のサービスから、より上位の体験へと向かう垂直の動きで単価アップ
- クロスセル(横に広がる矢印): 関連する別ジャンルの商品へ移動し、体験の幅を広げる水平の動きで単価アップ
- 経済圏(循環する矢印): 矢印が組み合わさりお客様が自社サービスの外へ出ずに回り続ける構造。
阪急電鉄の小林一三が作った「私鉄モデル」がその代表例です。
- 駅(点)を線路(矢印)でつなぐ
- 線路沿いに百貨店・住宅地・劇場を配置
- 「電車に乗る」が「買う」「住む」へ自然につながる
小さな会社も夢ではない経済圏の設計図
経済圏は大企業グループだけのものではありません。お客様のライフサイクルを「矢印の合成」として捉えれば、小さな会社でも独自の経済圏を構築できます。
工務店を例に点と矢印をどう設計すれば、継続的な利益構造=経済圏になるのかを整理します。
| お客様の状態(点) | 工務店が示す矢印(射) | 圏論的意味と役割 |
| 家を建てた直後 | 定期メンテナンス・相談会 | 恒等射(他社へ流さず自社に戻す) |
| 暮らしの中期 | インテリア・消耗品の提案 | クロスセル(横へ広がる体験) |
| 長期の暮らし | リフォーム・住み替え支援 | アップセル(深く長い信頼関係) |
お客様の行動が途切れないよう、次の「点」への「矢印」をあらかじめ設計しておくこと。このシンプルなデザインこそが、競合が入り込めない最強の経済圏を作る最短ルートです。
参考文献
加藤文元『はじめての圏論』(講談社)
フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティング・マネジメント」(丸善出版部)

