種蒔きと金のなる木の育て方〜製品ポートフォリオ・マネジメント〜

成長の鍵を握る経営資源の適切な配分

製品と資源配分の成功法則

製品ポートフォリオ・マネジメントは、企業が製品への経営資源を戦略的に配置し、収益性と成長性を最大化するための重要な枠組みです。

『製品ポートフォリオ・マネージメント』とは?
 企業が製品への経営資源を戦略的に配置し、収益性と成長性を最大化するための重要な枠組み

ポートフォリオとは、企業が持っている製品の一覧です。

製品ポートフォリオ・マネジメントの目的は、現在の主力製品、将来の主力製品、成熟期にある製品、収益を押し下げている製品を見極め、経営資源を適切に配分し、成長を促進させることです。

組織能力(OC:Organizational Capability)つまり、その組織でしか生み出せない独自の強みを、最大限に生かし、それを基盤に製品ポートフォリオを構築することで、競争優位を築くことができます。

ボストン・コンサルティング・グループによる製品ポートフォリオ・マネジメントは、成長率と市場シェアに基づき、問題児、花形、金のなる木、負け犬の4つのカテゴリに製品を分類しています。

問題児 栄養を与え花を咲かそう

特徴市場成長性が高く、市場シェアが低い製品
戦略将来的に収益の柱となる可能性があるため、水と肥料を与えるように投資を惜しまず、果実を実らせることが成功の鍵

花形 撤退的に守り抜こう

特徴市場成長性と市場シェアがとも高い製品
戦略積極的な投資で新たな顧客を獲得し、既存の顧客を維持し、市場でのポジションを強化

金のなる木 花の盛りを見極めよう

特徴市場成長は低いが市場シェアが高い製品
戦略安定した収益を生み出しますが、成長の鈍化が懸念されるため、得た利益を成長性の高い問題児に再投資

負け犬 撤退も戦略の内

特徴市場成長率と市場シェアとも低い製品
戦略経営資源を割かず、有望な事業に焦点を当て、成功の可能性を高める

経営資源を振り分ける製品と撤退すべき製品を選定することが、戦略の成功につながります。

成長戦略の理想形

“ソニーグループが金融部門を分離・独立させ、主力のエンターテインメントと半導体に経営資源を集中” (2023年5月)、“三菱自動車 中国市場からの撤退決定へ 日系メーカー各社が苦戦” (2023年10月)などグローバル企業の市場動向が新聞紙面を賑わせます。

こうしたグローバル企業の市場動向を見ると、中小企業経営者は製品ポートフォリオ・マネジメントを大手企業の戦略ツールと考えがちです。

しかし、初めから市場に強力なポジションを築くことは難しいものです。中小企業が成長するためには、次の2つのポイントに焦点が重要です。

1.顧客重視のアプローチ

経営資源が少なくても戦いやすい自社の強みが活かせる市場で強力な顧客基盤を築きましょう。顧客の満足度を向上させ、既存顧客の維持と新規顧客の獲得に注力します。

2.問題児製品への注力

成長率が高いのに市場シェアが低く、伸びしろのある問題児に投資しましょう。製品やサービス向上のために資源を投入し、競争力を高めます。

製品ポートフォリオ・マネジメントは、中小企業の成長戦略においても自社の根幹となる「金のなる木」を育てるための不可欠な要素です。経営資源の効果的な配分により、成長と成功が期待できます。

コラム  内閣のポートフォリオ
  政治の世界では、内閣の閣僚名簿を指します。内閣には、将来の首相候補と目される人物や実務に長けた政権の支柱となる最適な人材が顔を揃えます。ところがスキャンダルを抱えた人物を登用すると内閣支持率を大きく低下させることがあります。

派閥の全盛期は、A派から何名、B派から何名と、経営資源を配分するように、組閣を行いました。いつの時代も、内閣は「この顔ぶれで、日本の将来は大丈夫なのか?」と議論の的になります。

参考文献
 

 大前研一『企業参謀』(講談社)

今枝昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティングマネジメント」(丸善出版部)