成長の鍵を握る経営資源の適切な配分
限りある経営資源を成長分野に投入
経営者にとって自社製品や事業の成長と衰退を見極めるのは難しい課題です。
製品ポートフォリオ・マネジメントは、市場成長率と市場シェアを元に、経営資源を適切に製品や事業に配分しリスクを避けながら収益を確保するための製品市場戦略の支柱です。
“ソニーグループが金融部門を分離独立させ、主力のエンターテインメントと半導体に経営資源を集中” (2023年5月)といったグローバル企業の市場動向が新聞紙面を賑わせます。
こうした報道を見ると、中小企業経営者は「ウチには無縁の話しだよ」と考えがちです。
しかし「私の会社の製品の1つは黒字で、1つは成長の余地十分だ!でも2つの製品が赤字で足を引っ張る。これを1つに絞れば挽回できるかも」という状況は事業規模に限らず発生することです。
製品ポートフォリオは、企業の製品一覧です。ボストン・コンサルティング・グループによる製品ポートフォリオ・マネジメントは、市場成長率と市場シェアを軸に、製品を問題児、花形、金のなる木、負け犬の4つの成長ステージに分類しています。
問題児実は未来の優等生
企業の生産活動とは市場の開拓を意味します。農業に例えると開墾した土地(市場)に種を播き、水を引き(マーケティング)、果実(利益)の収穫を待つというイメージです。
では問題児、花形、金のなる木、負け犬の、それぞれの特徴と戦略を見ていきましょう。
問題児=テンバガーの可能性
特徴 | 市場成長性が高く、市場シェアが低い製品 |
戦略 | 株式に例えるとテンバガーの可能性を秘めた製品。成長の見込みが高いのなら積極的に投資することで大化けの可能性。 |
花形=攻めと守りでシェア堅持
特徴 | 市場成長性と市場シェアがともに高い製品 |
戦略 | 競争が激しいため、積極的な経営資源の投下が必要。しかし、収益が見込めないことも考慮し、攻守のバランスを保ちながらシェアを堅持。 |
金のなる木=花の盛りを見極めよう
特徴 | 市場成長は低いが市場シェアが高い製品 |
戦略 | 成長の鈍化が懸念されるため、投資を縮小し収益を回収する段階。確保した利益を成長性の高い問題児に再投資し、将来的な成長を目指す。 |
負け犬=撤退も戦略の内
特徴 | 市場成長率と市場シェアとも低い製品 |
戦略 | 赤字が続き手元の資金は減る一方の状態。撤退を検討するのも選択肢。不採算事業から有望な事業に経営資源を注力し成功の可能性を高める。 |
成熟期を迎えた金のなる木から得た利益を、成長しそうな問題児に投資し、花形に育てます。花形が成熟期を迎えると金の成る木へと育ちます。
限られた経営資源を活かし、成長の可能性が高い有望な製品に積極的に投資して強力な顧客基盤を築くことが製品市場戦略の要諦です。
大前研一『企業参謀』(講談社)
今枝昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)
フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティングマネジメント」(丸善出版部)