競争は価値こそが勝ちである 〜ポーターの競争戦略〜

戦略は“違い”をつくり、価値と利益を築くこと

競争戦略とは、他と同じことをして競い合うのではありません。違いをつくり出すことです。その違いが、お客様にとっての価値、企業にとっての利益に変わります。

日本の教育では、周りと同じである同質性を求められます。ところがビジネスの世界では、同質性は価格競争という血で血を洗う激戦市場 レッドオーシャンへの入口、違いは、競合の少ない穏やかな青い海 ブルーオーシャンへの入口。

戦略は「どちらの海で戦うか」を、選択することに他なりません。競争戦略は、どこで・誰に・どんな価値を届けるかを決めること。そのための3つの戦略を紐解きます。

ポーターの3つの競争戦略

経営学者 マイケル・ポーターは、他との違いを生み出し、競争優位を築くための戦略を3つに体系化しました。

  1. コストリーダーシップ戦略
    • 特徴: 業界内で圧倒的な低コストを実現!
    • 価値: 徹底した効率化により、低価格と安定した品質価値
  2. 差別化戦略
    • 特徴: 価格以外で独自の魅力を打ち出す!
    • 価値: 機能、体験など「これがいい!」と選ばれる価値
  3. 集中戦略
    • 特徴: 特定の顧客層や地域に絞り込む!
    • 価値: 範囲を限定して、その層に深く沁みる高価値 

コストリーダーシップ戦略は、スシローやダイソーのように大量仕入れが可能な大資本の戦略。中小企業にとって、現実的で勝機があるのは差別化戦略と集中戦略です。

インネパに学ぶ同質化からの脱却

ネパール人経営のインド料理店 通称インネパは、なぜレッドオーシャンに陥ったのでしょう?

多くの店が「バターチキンカレーとナン食べ放題」という成功モデルを模倣した結果、同質化が起こり価格でしか選ばれなくなったからです。

戦略何を行う?お客様に届く価値
コストリーダーシップ徹底した効率化低価格 × 安定した品質
差別化独自の料理・体験ダルバート・モモなど本格ネパール料理
集中特定の客層に特化グルテンフリー・ビーガン対応

コストリーダーシップ戦略はCoCo壱のようなカレーチェーンだからできる戦略。インネパが選びやすいのは 差別化戦略と集中戦略です。

生き残った店は「ネパールの家庭の味」と差別化したり「健康志向の特定層」へ集中することで、価格競争から抜け出しました。他との違いこそが、お客様が選ぶ唯一の理由。違いは自社の大切な事業と利益を長期的に守り続ける「盾」となるのです。

 

参考文献

マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社)

室橋 裕和『カレー移民の謎』(集英社)