競争は価値こそが勝ちである 〜ポーターの競争戦略〜

インネパに学ぶ「違い」の作り方

日本各地に広がるネパール人経営のインド料理店、通称インネパ。

多くの店舗が成功店の 「バターチキン × ナン食べ放題」 を模倣。その結果、選ばれる基準は、安さだけになりました。

この現象が利益を削り続ける典型的な同質化の罠 。

いま危機感を抱いたインネパの経営者たちは、“違い” を生み出す動きへと舵を切り始めています。

戦略の本質は“違い”で利益と価値をつくるこ

競争戦略論の第一人者 マイケル・ポーターは、企業が生き残るための3つの戦略を提示しています。

戦略目指すもの中小企業でも可能?
コストリーダーシップ業界最低コストで優位性を確保大資本が必要で難しい
差別化独自価値を創造し選ばれる理由をつくる取り組みやすい
集中ニッチ市場に特化し優位性を確保取り組みやすい

ポーターの競争戦略の核心はただ一つ。競合との違いで独自価値をつくり、長期的な利益を築くことです。

インネパが挑む競争戦略

インネパの多くは先行店の模倣からスタートしました。

  • 機能価値:バターチキン & ナン食べ放題
  • 価格価値:とにかく安い

しかし、この組み合わせでは価値が伝わらず、価格競争から抜け出せません。

「違いこそが、成功のスパイス」成功の鍵は“選ばれる理由”を再定義する競争戦略です。

戦略何をやるか何を届けるか
コストリーダーシップ徹底した効率化低価格 × 安定品質
差別化独自の料理・空間・体験を創造ダルバート・モモなど本格ネパール料理
集中特定客層に特化グルテンフリー・ビーガンなど

コストリーダーシップ戦略は大資本が必要。中小店舗が現実的に取り組めるのは、差別化戦略 × 集中戦略 の組み合わせです。

さらに“模倣困難な優位性”を生む3つの方向性です。

  1. 文化的差別化(ストーリー × 料理)
     家庭料理や祭事食を提供し、料理に文化的背景や物語を付加する。
  2. 体験型差別化(体験 × 空間)
     料理教室、民族音楽イベントなど、“食体験”そのものを価値化する。
  3. 地域密着型集中(ローカル × ネパール)
     地元食材を活かし、地域文化とネパールの料理を掛け合わせる。

「ナマステ、ポーター先生」インネパの経営者たちは今日も、“違い”というスパイスを磨き続けています。

競争は価値こそが勝ち! 違いが価値を生み、その価値が長期的な利益をつくるのです。

 

参考文献

マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社)

室橋 裕和『カレー移民の謎』(集英社)