バイアスを利用する販売戦術
バイアスに縛られている人類
バイアスとは行動経済学の研究によって解明された人の思考と行動に判断エラーを与える思い込みや偏見です。
私たちの脳は、バイアスという鎖に縛られていると言っても過言ではありません。人は自分に都合の良い情報ばかりに目が行きがちで、そうでない情報を軽視してしまう傾向があります。
解剖学者の養老孟司(1937-)は大ベストセラー『バカの壁』で、こう説いています。
この壁(バイアス)が存在するため、すぐに確認できる限られた情報だけを考慮し、それがすべてだと思い込むのです。
自分の見たものがすべて
行動経済学の始祖 エイモス・トヴェルスキー(1936-1996)は、一言で人間の心の本質を突いた指摘をしています。
販売促進の基盤 バイアス
マーケティングの世界的権威 フィリップ・コトラー(1931-)は、マーケティングとともに歩んだ半生を綴った『私の履歴書』の中で、次のように述べています。
行動経済学はマーケティングの別称に過ぎない
人の意思決定に大きな影響を与えるバイアスは、行動経済学の基盤でありマーケティングと密接に結びついています。
行動経済学の3大権威 リチャード・カーネマン(1934-)、エイモス・トヴェルスキー(1936-1996)、リチャード・セイラー(1945-)の研究によって解明されたバイアスによって生じる8つの行動現象を挙げています。
バイアスによって生じる8つの行動現象
プライミング効果 | 先行する刺激が後の行動に影響を及ぼす |
少数の法則 | 数字だけでその結果が正しいと感じる |
アンカリング効果 | 最初に見た印象や数字で意思決定を行う |
ハロー効果 | 見た目だけで人物の評価を決め付ける |
サンクコスト効果 | 回収不能のコストを取り戻そうとする |
保有効果 | 自分が保有する物に高い価値を感じる |
確実性効果 | 確実性の高いものに価値を感じる |
フレーミング効果 | 選択肢の見せ方次第で意思決定が変わる |
事前に得た情報が呼び水となり購買の決定打となるプライミング効果、最初の印象が心に残るアンカリング効果、見た目に惹かれるハロー効果などの現象を理解することで、広告やプロモーションの設計において効果的なアプローチを見つけることができます。
これら8つのバイアスは、消費者の購買意思決定に大きな影響を及ぼします。バイアスを理解することで製品やサービスの訴求力を高め購買を促進させ収益を向上させることが期待できます。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
ダニエル・カーネマン『NOISE』(早川書房)
リチャード・セイラー キャス・サンティーン『実践行動経済学 完全版』(日経BP社)