「イエス」と言わせる“私たち”という存在〜一体性の原理〜

一体性で価値と収益性を高める法

心に潜む一体性の正体

人は仲間意識を持っている相手の望むことにすぐに「はい」と答える本能があります。自分が仲間と考える相手に同意しやすい行動心理を一体性の原理といいます。

『一体性の原理』とは?
 人が、自分の仲間と考える相手に同意しやすい心理

アメリカの社会心理学者 ロバート・B・チャルディーニ(1945-)は、著書『影響力の武器』の中で、個人と一体性の関係を「私たちとは、共有された私」と表現しています。

たとえば女子高生は、自分自身を指す時にウチらという言葉を用います。

ウチらは、自分を含めたグループのみんな=私たちを意味します。ウチらは自分が属するグループであり、自分のアイデンティティーを一緒に作り上げてる仲間なのです。

つまり、グループの中にいると、そのグループの人たちの幸せや好みを大切にしたり、みんなが一緒に行動することで、一体性が生まれグループの絆が強まるのです。

お客様と企業の一体性の築き方

お客様が、企業やブランドの価値観に共感すれば、帰属意識が芽生え一体性が生まれます。

人は、自分が好きなブランドの製品を買うと、自分がそのブランドのファンの1人であると感じることがあります。その企業が新しい製品を出すと、わくわくした気持ちになります。

その理由は、お客様と企業(ブランド)の間に特別なつながりを感じているからです。

お客様と企業が私たちの関係を築くポイントは、製品のストーリーと共通の価値観の2つです。

お客様は、製品がどんな経緯で生まれ、企業がどんな価値観を持っているのかを知ることで、自然とそのブランドに共感し、身近に感じることができます。

人は、スティーヴ・ジョブズ(1955-2011)が率いたiPhone開発チームのストーリーに惹かれてアップルのファンになります。自分がアップルの一員であるかのような感覚を抱くことで、アップルとの一体性を感じるのです。この一体性が、アップルファンが新しい製品を待ち望み製品を購入するきっかけの要因になります。

安全な有機野菜を作る生産者と美味しさと安心を求める消費者の心が一つになった時、安心で美味しい食材という共通の価値観のもとで両者に信頼関係が築かれ一体性が生まれます。

企業は、お客様のニーズや好みに合わせた製品やサービスを届けることで、お客様の一体性を高め、利益を確保することができます。

 コラム  アシモフの『ロボット3原則』
  SF小説の巨匠 アイザック・アシモフは、スポーツファンについて、「応援する相手が誰であれ、その相手は自分の代理になり、その人の勝利は自分の勝利である」と評しています。

アシモフは、作品で人間とロボットが共存する世界を描き、ロボットには「人間に危害を加えない、命令に従う、人間が違反したら自身を守ってよい」という3原則を生み出しました。

感情を持たないロボットは人類の中で「共有された私」となりえるでしょうか?アシモフは、60年前から人類と技術の共存についての深い洞察を提示しています。

参考文献
 

ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 新版』(誠信書房)

佐藤尚之『ファンベース』(筑摩書房)