「イエス」と言わせる“私たち”という存在〜一体性の原理〜

帰属意識で価値と収益を高める法

心の中の一体性の正体

一体性の原理とは、人が、自分の仲間と考える相手には同意しやすい心理です。

『一体性の原理』とは?
 人が、自分の仲間と考える相手には同意しやすい心理

社会心理学者 ロバート・B・チャルディーニ(1945-)は、著書『影響力の武器』の中で、個人と一体性の関係を「私たちとは、共有された私」と表現しています。

「私たち」とは、複数の個人が集まって特定のグループやコミュニティを形成していることを指しています。また、「共有された私」は、このグループやコミュニティの一員としての共通のアイデンティティや経験を強調しています。

人々が共通の価値観や目標、経験を共有することで、集団全体に対する帰属意識が高まり、一体性が生まれます。

帰属意識の強い力

ロバート・B・チャルディーニが、社会心理学の最新の研究から導き出した一体性の原理を、マーケティング戦略に組み込めば競争優位を築き、高い収益を得る一助となります。

帰属意識とは、個人が特定の集団に属することで生まれる一体感や誇りです。製品が、お客様にどのような価値を提供し、私たちの中の一員として誇りに思えるような要素を強調することが重要です。

お客様と企業が“私たち”の関係を築くポイント

1.共感的なストーリーテリング

ブランドにまつわる感動的なストーリーは、お客様の心に響き、一体感を生み出します。ブランドの起源や価値観を共有することで、お客様はブランドに共感しやすくなります。

2.ブランドと顧客の共通の価値観

お客様の価値観と製品が提供する価値観を一致させることが重要です。共通の価値観があれば、お客様はブランドに強い結びつきを感じ、忠誠心が育ちます。

オンラインやオフラインのコミュニティを構築し、お客様同士が交流できる場を提供することが不可欠です。これにより、「私たち」としての帰属意識が高まります。

一体性の原理を理解し、マーケティング戦略に活かすことは、深い顧客関係を築き、収益を向上させる有益な手段です。

コラム アシモフの『ロボット3原則』
  SF小説の巨匠 アイザック・アシモフは、スポーツファンについて、「応援する相手が誰であれ、その相手は自分の代理になり、その人の勝利は自分の勝利である」と評しています。ファンは、地元チームという共通の価値観を共有し、帰属感を育みます。

このアシモフは、作品で、人間とロボットが共存する世界を描きました。しかしロボットには「人間に危害を加えない、命令に従う、人間が違反したら自身を守ってよい」という3原則があります。『ロボット3原則』に従うロボットは感情を持ちません。人類の中で「共有された私」の一部となりえるでしょうか?アシモフは、人類と技術の共存について深い洞察を提示しています。

参考文献
 

ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 新版』(誠信書房)

佐藤尚之『ファンベース』(筑摩書房)