経済学の巨人が説く消費社会を動かす原理
欲望は一体誰が作るのか?
「なぜ、必要ないものまで買ってしまうのだろう?」
その答えは、経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイス(1908-2006)が説いた依存効果にあります。
依存効果とは、「欲しい」という欲望が、実は企業の広告やマーケティングによって作り出されているという考え方です。
ガルブレイスは著書『ゆたかな社会』の中で「現代の企業は、製品だけでなく、その製品を欲しがる欲望も同時に生産している」と述べています。
欲望はこうして作られる
では、どのようにして欲望が作られるのでしょうか?
洗濯機は壊れない限り、買い替えようとは思いませんそこでメーカーは、人々に「環境に優しいエコ家電」というメッセージを語りかけます。
つまり「より良い生活を送りたい」という深層心理に訴えかけて欲望を呼び起こしているのです。
- 無意識への働きかけ: 「より快適な生活」といったメッセージで、人の潜在的なニーズに訴えかける

さらに次の現象が人々の消費行動に大きな影響を及ぼしています。
- 個別化の加速: AIが個人の好みを分析し、「あなたにぴったりの商品です」と提示することで、購買意欲を高める
- 所有欲の操作: 「最新モデル」「限定品」といったキーワードで「人より良いものが欲しい」という心理を巧みに刺激
この仕組みは、まるで映画『ゼイリブ』(1989年)の世界です。
映画では、主人公が特殊なサングラスをかけると、街中に隠された「BUY(買え)」や「OBEY(従え)」といった洗脳メッセージが見えるようになります。

私たちは、サングラスを外した現実の世界で、本当に欲しいものは何なのか、改めて考える必要があるのかもしれません。

参考文献
ジョン・ケネス・ガルブレイス『ゆたかな社会 決定版』(岩波書店)