種蒔きと金のなる木の育て方〜製品ポートフォリオ・マネジメント〜

市場の「金」を掘り当てろ!相撲部屋に学ぶ投資の見極め

企業が持続的な利益を生むには、利益の核となる製品を見極め、限られた経営資源をどこに投資・集中させるかの決断が必要です。

ヒントは、意外にも相撲部屋の経営に隠されています。

親方は、部屋の米びつ(収益源)を満たすため、入門してきた力士から原石として見極め、投資をどの力士にどれだけ行うかを常に決断しています。

4タイプに分かれる製品

製品ポートフォリオマネージメントは、製品を、次の2つの軸から分析し、成長段階と収益貢献度で4タイプに分類します。

  • 目的:限られた経営資源を、最も効果的に利益へつなげるための投資配分を決める
  • :市場成長率(未来の可能性)と市場シェア(現在の強さ

1. 問題児

  • 将来性: 高い
  • 実績: 低い
  • 特徴: 将来性は高いものの、まだ実績が伴わない製品。市場で成功するために多くの投資と育成が必要な「種」の段階。成功すれば花形になりますが、失敗すれば撤退も?

2. 花形

  • 将来性: 高い
  • 実績: 高い
  • 特徴: 高い成長率の市場で、確固たるシェアを持つ製品。現在の収益の柱。さらなる成長が見込める金のなる木の有力候補。最も資源を投入し、徹底的に優位性を確立すべき製品。

3. 金のなる木

  • 将来性: 低い
  • 実績: 高い
  • 特徴: 成長が鈍化した成熟市場で高いシェアを持つ製品。追加投資は少なくても着実に安定した収益をもたらす。ここで得た収益を、「問題児」や「花形」に再投資。

4. 負け犬

  • 将来性: 低い
  • 実績: 低い
  • 特徴: 成長の見込みがない市場でシェアも低い製品。投資効果が見込み薄。有望製品への資源集中を優先し撤退や事業縮小の検討段階。

製品の育成・維持・撤退の判断の指針です。

親方に学ぶ決断と手腕

力士の入門から引退(廃業)までの土俵人生は、製品のライフサイクルと同じです。

  • 集中と選択:全員に均等投資はできない。伸びる力士=製品に集中!
  • 問題児(種)=幕下の有望株 → 親方は稽古・食事・期待を集中投資。成功すれば「花形」へ。
  • 花形(スター)=大関・関脇 → 部屋の稼ぎ頭。最高の環境を与え、横綱=看板を目指す。
  • 金のなる木(安定収益源)=横綱・ベテラン → 成長は鈍化してもブランド力で安定収益。投資は抑えつつ収益を回収。
  • 負け犬(撤退候補)=芽が出ない力士 → 投資効果が薄い。廃業=撤退を検討。

第75代横綱 大の里は、入門からわずか2年という異例の速さで横綱に昇進。

二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)の「問題児」としての高い将来性に対する大胆な見極めと、集中した資源投入が、短期間で「花形」、そして「金のなる木」へと成長させた、経営判断の成功例といえます。

目先の短期利益でなく、大局的見地から逸材をいかに見極め、育成・投資できるかが、親方=経営者の手腕です。

参考文献

 今枝昌宏『実務で使える戦略の教科書』(日本経済新聞出版社)