仮面ライダーに学ぶ1を100にする成功式
どうしても0から1は生まれない
イノベーションとは、既存の要素を新しい方法で組み合わせることで、これまでになかった価値を創造し、世の中に変革をもたらすことです。
よく「ゼロからイチを生み出す」と言われますが、現実には、完全に何もない状態から何かを創造することは不可能です。
経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、このプロセスを新結合(ニュー・コンビネーション)と名付けました。
新結合を理解するのに最適な例が、チーかまです。
チーかまは、日本の伝統的な食材 かまぼこと、西洋の食材 チーズという、まったく異なる2つの要素を組み合わせるという画期的なアイデアから生まれました。
この新結合大成功を収めたことで、チーズちくわやカニカマといった、新しい風味を持つかまぼこ製品が次々と登場し、巨大な市場が形成されました。
イノベーションは、既存のものを再構築することで、新たな価値と利益を生み出す力を持っているのです。




ヒーローのライダー自身が新結合
国民的ヒーロー 仮面ライダー。人間と動植物を組み合わせた改造人間という設定と、苦悩を描く深みは、当時の特撮番組の常識を覆すものでした。

石ノ森章太郎(1938〜1998)の漫画とテレビドラマが同時に展開され大ヒット。
人気に乗じて初の子供向けテレビ雑誌『テレビマガジン』が誕生。さらに、主役の藤岡弘、(1946〜)のアクシデントをきっかけに、急遽登場した2号ライダーが、長寿シリーズの道を拓きます。

仮面ライダーの世界観は、キャラクタービジネスへと広がります。その効果は計り知れないものがあります。
物語という1のアイデアが、メディア展開で10に、キャラクタービジネスで100に引き上げられたといえるでしょう。

仮面ライダーは、半世紀も前に今日のIP(知的財産)ビジネスの価値創造を先取りしました。
イノベーションは、想像以上の価値と利益を創造することができるのです。

名和 高司『シュンペーター』日経BP