3分でわかる『依存効果』
覚えておきたい現代マーケティングを動かす原理原則
欲望は 一体何から 生まれるか?
依存効果とは、企業の働きかけによって消費者の欲望が喚起される現象です。
企業の働きかけにより消費者の欲望が喚起される現象
経済学の巨人といわれるジョン・ケネス・ガルブレイス(1908~ 2006)は、1958年に発表した『ゆたかな社会』の中で、「消費者は自分で何が欲しいのかを意識することができず、広告やマーケティングによってはじめて自分の欲望がはっきりする」と主張しました。
消費者は自分で何が欲しいのかを意識することができず、
広告やマーケティングによってはじめて自分の欲望がはっきりする
ジョン・ケネス・ガルブレイス
その考えは、現代のマーケティング原理の重要な指針となっています。
売るために 新たな欲望を 作り出す
依存効果は、企業にとって多大な収益をもたらすことから、マーケティング界の最高権威であるフィリップ・コトラー(1932-)もガルブレイスと同様の見解を示しています。
企業みずからが何らかの問題を生み出さなければ、
人々に新しい欲望を生み出すことができなくなった
フィリップ・コトラー
例えば、洗濯機は、故障しなければ買い替える必要は生じません。
そこで家電メーカーは環境問題を切り口に「節水&節電効果に優れたエコ家電」として洗濯機を訴求することで、消費者に新たな欲望を刺激し、新たな市場を生み出すのです。

ガルブレイスの考えは、過去から現在までの約65年間にわたり、高度消費社会のあり方を示唆しています。
企業はマーケティングを通じて消費者の欲望を刺激し、新たな市場を開拓することで競争力を保っています。企業の規模や業種を問わず経営者にとって、マーケティング戦略の一環として依存効果を理解し、消費者の欲望を喚起する方法を考えることは、とても重要です。
半村良の小説『不可触領域』は、メディアによる大衆コントロールをテーマに一地方都市のディストピア化を描いています。
この作品は、市民が自らの欲望を見失い、外部の力によって操作される現代社会の姿を投影しています。私たちは日常生活で様々な広告やメディアの影響を受けていますが、自分自身を信じ、自らの本当の欲望を見極めることが重要です。欲望をマーケティングに左右されるのではなく、自らの意思で物事を判断し、コントロールする力を持つことが、明るい未来への一歩となるのでしょう。
ジョン・ケネス・ガルブレイス『ゆたかな社会 決定版』(岩波書店)
ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造 新装版 』(紀伊國屋書店)
見田宗介『現代社会の理論』(岩波書店)
見田宗介『現代社会はどこに向かうか』(岩波書店)
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮社)
山口周『ビジネスの未来』(プレジデント社)