フレーミング効果が握る収益最大化の鍵
意思決定を左右するフレーミング効果
フレーミング効果は、バイアスの一つで、同じ情報でも言い方や表現によって、人々の印象が大きく変わり、意思決定に影響を与える心理現象です。
フレーミング効果を語る上で、欠くことのできない有名な実験があります。行動経済学の権威 ダニエル・カーネマン(1934-)とエイモス・トヴェルスキー(1937-1996)が行った『生存率・死亡率実験』です。
実験では、医師を対象に「生存率90%の手術と放射線治療」と「死亡率10%の手術と放射線療法」という同じ意味を持つ2つの表現で意思決定を比較しました。
前者のポジティブな表現では84%の医師が手術を選び、後者のネガティブな表現では50%ずつに分かれました。

実験とはいえ、冷静な判断が求められる医師でさえも「死亡率」というネガティブな表現に反応し、意思決定に影響を与えるのです。
フレーミング効果を販売戦略に活かす方法
カーネマンとトヴェルスキーが、つきとめたフレーミング効果を活かし、販売戦略に取り入れることは、競争優位を構築し、収益を最大化するための戦術の一環となります。
企業が直面する重要な課題の一つが在庫管理です。多くの経営者は「完売」という表現に対してポジティブな印象を抱くでしょう。
しかし、お客様にとっては、「完売」は、機会損失を招く「欠品」を意味します。
欠品率が1%上昇すれば、売上も1%減少します。以下のアプローチを通じて、在庫ロスを最小限に抑えつつ、収益を増加させることが期待できます。
完売を強調するフレーミング
この商品は人気が高く完売することが多いため、ご注文はお早めにお願いします。
完売を強調することで、商品の人気や価値を示唆し、お客様に購入の決断を促します。顧客は「人気のある商品を早く手に入れたい」という欲求を刺激されます。
欠品を強調するフレーミング
今すぐご購入ください。欠品時の再入荷には時間がかかることがございます。
欠品を強調することで、お客様に機会損失を意識させ、緊急性を高めます。顧客は「在庫がなくなる前に購入しなければならない」と、急いで購入する可能性が高まります。
このように、フレーミング効果を通じて、お客様の意思決定を効果的に誘導できるのです。
しかし終戦という表現は、戦争に勝ったか?負けたか?がわからないので、責任の所在を曖昧にする負の側面があります。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
リチャード・セイラー キャス・サンティーン『実践行動経済学 完全版』(日経BP社)
鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)