手放さない 理由わかれば モノ売れる
いらないけど捨てられない
保有効果とは、一度自分のものになった物に対して、その実際の価値以上に愛着を感じ、手放すことに抵抗を感じる心理です。
自分が持っている物に対して、手に入れる前の2倍以上の価値を感じるという説もあります。
長年使い慣れた携帯電話からスマートフォンへの移行期。機能面ではスマートフォンのほうが優れているとわかっていても、共に過ごした時間や思い出、使い慣れた感覚などが複雑に絡み合い、なかなか買い替えに踏み切れない人がたくさんいました。
これは、単なる機能の比較を超えた、理屈では測れない感情的な価値が、物に宿っているからです。

手放して もらわなくては モノ売れぬ
イトーヨーカドーの「衣料品下取りキャンペーン」は、保有効果をうまく活用した成功例です。
お客様が持ち込んだ古着1点につき1,000円で下取りし、その1,000円を新しい衣料品の購入に充てられます。
「もう着ないけれど捨てるのはもったいないわ」とい感じていた古い服に、1,000円という金銭的な価値を与えることで、お客様の手放すことへの抵抗感を和らげました。
単なる値引きではなく、古いものを手放す体験と新しいものを手に入れる体験を上手に結びつけた点がヒットの理由です。
このように、お客様の「手放したくない」という心理に寄り添い、具体的な価値を届けることで、企業は長期的な利益を築き、お客様との関係性を、より深めることができるのです。
『保有効果』
自分が保有する物に対して高い価値を感じ、手放したくないという心理
参考文献
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)