恩恵を お返しすれば うまくいく!
〜返報性の原理〜

返報性の原理 恩恵

昔からあるギブアンドテイクのルールが生む利益

恩恵はお金に変えるマーケティングに進化

返報性の原理は、他人から恩恵を受けた時、恩恵に対する感謝の気持ちから「お返しをしなければならない」という心理が生まれる現象です。

『返報性の原理』とは?

他者から恩恵を受けた場合、恩恵に対する感謝の気持ちから「お返しをしなければならない」という心理が生まれる現象

ロシアの革命家 ピョートル・クロポトキン(1842-1921)は『相互扶助論』で、「生物や社会の進化の要因は生存競争ではなく、相互に恩恵のある協力関係である」と説いています。人類は、互いに協力し合うことで繁栄を手に入れたといえます。やがて恩恵は、経済の発達とともに、お金に変えるマーケティング手法に結びついていきます。

無料サンプルを受け取った時の心理

人は試食品を貰うと、空のカップだけ返して立ち去りづらいと感じ、試食品が気に入らなくても購入するという不合理な行動を取ることがあります。それは人の心に「受けた恩恵はお返しをしなければならない」と直感で判断する本能が働くからです。

アメリカの社会心理学者 ロバート・B・チャルディーニ(1945-)は、『影響力の武器』の中で「大手小売り企業のコストコ社の販売データによれば、ビール、チーズ、冷凍ピザ、リップスティックなど、あらゆる種類の製品が無料サンプルのおかげで大きく売り上げを伸ばしています。購入者のほとんど全員が、サンプル品を受け取った人なのです。」と記しています。

返報性の原理の及ぼす影響は世界共通です。特に義理や人情を重んじる日本では、返報性の原理が収益を向上させるカギになります。

コラム 横溝正史の恩返し

1933年、金田一耕助でおなじみの横溝正史は病いに倒れます。執筆不能となった横溝正史の穴を埋めた作品が『黒死館殺人事件』や『人外魔境』で一時代を築いた小栗虫太郎のデビュー作『完全犯罪』です。

「小栗君には恩があるんや」 1946年、45歳で急逝した小栗虫太郎に代わり、今度は横溝正史が追悼と恩返しの気持ちで連載を引き受けます。この時に生まれた作品が、探偵小説史に残る不朽の名作『蝶々殺人事件』です。

恩を返すことで人との絆が深まり、新たな才能や価値が生まれることを、このエピソードが物語っています。

参考文献

アダム・スミス『道徳感情論』(講談社)

ロバート・B・チャルディー二『影響力の武器』(誠信書房) 

ジェシー・ノーマン 『アダム・スミス 共感の経済学』(早川書房)

ブレイディみかこ『他者の靴を履くアナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋)

東海林さだお『貧乏大好き』(大和書房)

横溝正史『日下三蔵編 横溝正史エッセイコレクション3』(柏書房)