商圏は 顧客の心の中にある!〜商圏〜

魅力あふれる商圏とは? 距離だけでは測れない深い意味を解く

商圏の基本要素

商圏は、企業が影響を与える地域であり、同時に商圏とは、人の心に買い物の体験とともに残る場所でもあります。

『商圏』とは?
 自社の活動や影響が及ぶ地域の範囲。人の心に買い物の体験とともに残る場所

小売業やサービス業の出店戦略には、以下の4つの要素が欠かせません。

出店戦略の4つの要素

1.顧客の移動距離

消費者の購買行動は移動距離に大きく影響されます。どれだけ遠くから来店するかは重要な要素です

2.交通の利便性

消費者にとって店舗へのアクセスの便利さは重要です。アクセス手段や利便性が購買に影響を及ぼします。

3.競合店の存在

商圏内に競合店がある場合、消費者の購買行動に影響を与えます。競合店の特性を分析することが重要です。

4.地理的特性

商圏は地理的な要因にも影響を受けます。山岳地帯や交通インフラの発展などが考慮されます。

アメリカの経済学者、デイヴィッド・ハフ(1931-2014)が提唱した「消費者は大きな店舗へ足を向けやすく、近い場所を好む」というハフモデルが、長い間、商圏戦略の基盤でした。

しかし、ハフ理論は、売場面積と距離を基準にした60年前の理論です。古典的なアプローチを見直し、現代の市場に適応させることが重要です。商圏の消費者ニーズの多様化や競合への対応が遅れると業績悪化を招きます。

奇しくもハフ理論が生まれた翌年、1964年に開業した総合スーパー ダイシン百貨店(東京都大田区)は、業績が低迷し、2016年ドン・キホーテの傘下となりました。現在、商圏を見直しドン・キホーテ独特の売場演出から生まれる顧客体験と、かつて500m圏内の高齢者に的を絞り成功したダイシン百貨店のシニアマーケティングの融合の途上にあります。

商圏戦略の要諦

消費者は、スマートフォンやタブレットを駆使し、どこからでも商品にアクセスできる時代に生きています。

消費者の心には徒歩5分で行けるコンビニエンスストアから世界中の商品が24時間どこでもアクセスでき入手できるショッピングサイトが存在します。

消費者は過去の購買経験や感情的なつながりに基づいて、特定のブランドや店舗を選択します。現代の商圏戦略は、従来の距離やアクセス性に加え、感情的なつながりや顧客の体験に焦点を当てる必要があります。

企業は消費者の感情体験を向上させ、ポジティブなイメージを構築するための3つの要素です。

消費者の感情体験を向上させる3つの要素

1.顧客サービスの向上

お客様への丁寧な対応や迅速な対応は、重要な要素です。お客様が問題を解決する際にスムーズなサポートを提供し、その結果として顧客満足度を向上させます。

2.1人1人に合わせたサービス

お客様の好みや購買履歴に基づいて、1人1人に合わせたパーソナライズされた提案や嬉しい特典を提供することが必要です。

3.コミュニティの構築

お客様向けのイベントを開催して、商圏コミュニティを形成します。お客様は楽しみながら交流する機会を得ることができます。

お客様の感情面を重視し、期待値を超えるサービスを提供することが、競争力を維持し、成長を達成する鍵となります。最終的に、成功する商圏戦略は、顧客の心に残る場所としての店舗を育て、感情的なつながりを築くことが求められます。

コラム  イオンモールの取り組み
  大型ショッピングモールの草分け イオンモールは、休憩スペースなど商業エリア以外のスペースに着目しています。イオンモールウォーキングを旗印に、館内ウォーキングを奨励し、シニア層がウォーキング目的で来店することもあります。休憩スペースや歩行距離表示を設け、運動後に売場やフードコートに誘導し、顧客満足度と収益の両面を高めています。

参考文献
 

矢作敏行『コマースの興亡史 商業倫理・流通革命・デジタル破壊 』(日本経済新聞出版)

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティング・マネジメント」(丸善出版部)

フィリップ・コトラー他『フィリップ・コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版)