3分でわかる『フィアアピール』
人は恐怖に駆られパッと物を買い 時が経つとパッと恐怖を忘れ去る
目の前の 不安は解消したいもの
人には目の前の恐怖から逃れたい本能があります。『フィアアピール』とは、この本能を利用して最初に恐怖を訴求し、次に解決方法を用意し購買を促す販促手法です。
さて、2019年6月に金融庁から「夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では余命30年として単純計算で2,000万円が不足である」という試算が発表され、国民は老後への恐怖が高まりました。

当時、あなたが目にした「公的年金だけでは生きていけない!」などと、老後不安の恐怖を謳った広告手法が『フィアアピール』です。
ポイントは 恐怖の“強弱”のさじ加減!
現在も老後不安が解消される兆しはありません。しかし、あなたの記憶の中から『2,000万円問題』は徐々に薄らいだのではないでしょうか?
その理由は、人は強い恐怖に対する耐性が弱く、長期間記憶することが苦痛だからです。強い『フィアアピール』は人の心に一瞬で恐怖を植え付けます。ところが時間が経つと「厳しい現実を早く忘れたい」という感情が芽生えるにつれ購買意欲が薄れるデメリットがあります。

反対に、弱い『フィアアピール』は心の中で恐怖が緩やかに持続し、時間が経過しても記憶に残りやすいため高い購買意欲が維持できます。
『フィアアピール』は、強い恐怖よりも弱めの恐怖を訴求することで効果が期待できます。
人は恐怖から逃れたいがためにパッと商品に飛びつきます。そして時間の経過とともにパッと恐怖を忘れます。しかし新たな恐怖が頭をもたげます。世の中は『紫外線はお肌のシミの大敵!』とか『今のままではAIに仕事を奪われる!』などと人に恐怖を与えることで動いているといっても過言ではありません。
『フィアアピール』の効果は歴史が証明しています。諸将にとっては家康自体が『恐怖の存在』です。家康からすれば相手に「我に味方せい」と武力で強要することは容易です。しかし家康は手紙でやんわりと「拙者を助けて下さらぬか」と己れの胸中を綴った手紙を何通も送る方が、絶大な効果があることを熟知していたのです。
藤田政博『バイアスとは何か 』(筑摩書房)
隆慶一郎『影武者徳川家康』(新潮社)