欲求を バネに生きてる私たち
〜マズローの欲求5段階説〜

収益向上の答えは、人の欲求の中にある!

人の欲求を理解し収益に繋げる戦略の土台

マズローの欲求5段階説は、人間の欲求を5つの段階に分類する学説です。

『マズローの欲求5段階説 』とは?

人間の欲求は5つの段階に分類されるという学説

企業の目的は、顧客の欲求を探り出し、そのニーズを満たすための価値を提供し収益を得ることです。

中小企業は、経営資源に制約があります。その限られたリソースを効果的に活用するために、顧客の欲求を正確に理解し、それに合致した戦略を展開し、収益を最大化させることが理想の戦略パターンです。

アブラハム・ハロルド・マズロー(1908-1970)による欲求5段階説を、戦略に組み込むことで、ビジネスの成功に不可欠な3つの要素が浮かび上がります。

1.ターゲットの策定

消費者の欲求が、どの段階に該当するかを理解できます。例えば、第2段階の安全欲求に焦点を絞れば、その欲求を持つ顧客に向けて広告やプロモーションを効果的に展開し、経営資源を最適に利用できます。

2.競争優位性の確立

市場で競争に勝利するには、差別化が不可欠です。マズローの欲求5段階説を活用することで、他社とは異なる価値を提供できます。特定の欲求段階に焦点を当てた製品やサービスを打ち出すことで、市場での競争優位性を確立できます。

3.顧客忠誠度の向上

お客様は、自分の欲求が理解され、満たされることを感じる企業やブランドに忠実になります。お客様の欲求に合致する製品やサービスを提供することで、リピート購入を促進し、口コミによる新規顧客獲得を促進し、長期的な顧客関係を築き上げます。

自己実現欲求とこれからの消費

日本は大量生産大量消費の時を経て、成熟期を迎え、人々は快適な生活を手に入れました。豊かになるにつれ、余暇が増加し、個人の趣味や興味の幅が広がっています。

マズローの欲求5段階説を通じて、日本の家電消費の変遷を紐解いてみましょう。

日本人の欲求と家電消費の変遷

1.『生理的欲求』:食料や睡眠時間を確保したい

1945年、敗戦で焦土と化した日本。人々は「お腹いっぱい食べたい」「屋根のある所で眠りたい」という”生理的欲求“を抱きます。電力供給は逼迫し、家電どころか1日を暮すのに精一杯の時代です。


2.『安全欲求』:生活の安全や安心を得たい

戦後復興を遂げ経済成長の入口に立つと、人々は快適な空間で安心して暮らしたいという“安全欲求”を満たすために、洗濯機・冷蔵庫・白黒テレビの「三種の神器」と呼ばれた家電に憧れました。


3.『社会的欲求』:社会と関わり貢献したい

消費が成熟期に入ると、人々は省エネなど社会問題に関心を持ちます。環境に配慮することを通じて社会貢献を果たすために「エコ家電」を選び“社会的欲求”を満たしました。


4.『承認欲求』:他者からの評判を得たい

ダイソンやパルミューダなどのデザイン性に優れていて周りに自慢できるようなおしゃれな「デザイン家電」を所有することで”承認欲求“を満たします。


5.『自己実現欲求』:あるべき自分になりたい

2000年代、女性の社会進出が加速し、「仕事でも輝きたい」という女性の”自己実現欲求“を叶えるために食洗機やロボット掃除機などの「時短家電」がヒットします。

欲求5段階説は、自己実現理論と呼ばれます。マズローは、人は最終的に自己実現の欲求に向かって進化すると唱えました。

ビジネスの成功は、消費者の自己実現欲求を徹底的に理解し、それに合致した商品やサービスを提供することにかかっています。そのためには、人間の心の奥深くに潜むダークな部分、つまり他人には言えない欲求やコンプレックスに深くアプローチする必要があります。

自己実現欲求を満たす商品は、人々の心に深く響き、長期的な成功を収めることができるでしょう。洞察力と共感力を備え、消費者の真の欲求を発見し、その欲求に応えることが収益を最大化する近道です。

参考文献

鹿毛康司『「心」が分かるとモノが売れる 』(日経BP)

フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)