PayPayはなぜコード決済市場を制したのか?
マイケル・ポーターのファイブフォース分析は、業界の収益性を「競合」「新規参入者」「代替品」「売り手」「買い手」の5つの力で査定します。
これらの力が強いほど収益性は低下します。そこで企業は、収益性低下を避けるために戦略で競争優位を築いてきました。しかし、5つの力だけでは説明できない変化も存在します。
そこで注目されるのがシックスフォース分析、つまり第6の力を加えた視点です。
PayPayの成功も、この第6の力に大きく支えられています。
第6の力 補完者とは?
第6の力とは、自社製品の価値を高める「補完者」の存在です。
- コード決済における補完者 → 利用者・加盟店
補完者を味方につければ、脅威を機会へと転換できます。
ただし依存しすぎると、価格交渉力や主導権を奪われるリスクも伴います。
成功は味方をどれだけ増やせるか!
コード決済業界は、ファイブフォースの圧力にさらされる厳しい市場です。
加盟店は「手数料を要求する買い手(脅威)」である一方、「利用可能店舗を増やす補完者(機会)」でもあります。
| 5つの力プラス1 | 脅威・機会 | PayPayへの影響 |
| ①競合 | 脅威 | 楽天ペイなどとの競争で差別化が困難 |
| ②新規参入者 | 脅威 | 技術的障壁が低く、参入しやすい |
| ③代替品 | 脅威 | クレカ・交通系ICなど他の決済手段が豊富 |
| ④買い手 | 脅威 | 利用者は高還元、加盟店は低手数料を要求 |
| ⑤売り手 | 脅威 | 銀行・セキュリティ企業がインフラ面で影響力 |
| ⑥補完者 | 機会 | 加盟店と利用者の拡大が相互に価値を高める |
PayPayは「100億円あげちゃうキャンペーン」に象徴される大胆な投資で、加盟店と利用者という補完者を短期間で獲得し、市場で圧倒的な地位を築きました。
「使える店が多いから利用者が増える → 利用者が増えるから導入店舗が増える」という好循環こそが、PayPayが市場を制した最大の理由です。
そして忘れてはならないのは、利益を生む主役は常にお客様であるということ。
補完者を味方につける戦略の根底には、顧客価値の創造という普遍的な原則が存在します。
参考文献
B・ネイルバフ A・ブランデンバーガー『ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略』(日本経済新聞出版 )
