価格で負けて価値で選ばれず〜失敗する戦略 スタック・イン・ザ・ミドル

中途半端はもっとも危険

「安くもないし、特別でもない」 中途半端なポジションは、競争優位性を築けず、戦略的に最も危険な戦略です。

これが競争戦略の権威 マイケル・ポーターが警告するスタック・イン・ザ・ミドル(Stuck in the middle)です。

すべてを得ようとするとすべて失う

ポーターは、企業が「違い」で価値を生み出し、長期的に利益を上げる道筋を、3つの戦略で示しました。

戦略タイプ利益を築くしくみ目的
コストリーダーシップ業界内で最も低コストで届ける価格競争で市場攻略
差別化独自の価値や体験他社と一線を画す魅力で勝つ
集中特定市場に絞り込み限定された顧客層を虜にする

どれか一つに絞らずに「すべてのお客様を満足させよう」とすると、誰にも響かない中途半端な存在になります。

  • コスパ派のお客様=「もっと安いのがあるよ」
  • 高感度派のお客様=「もっと魅力的なのがあるよ」
  • 偏愛派のお客様=「ちっともわかってないよ」

三洋電機とシャープの末路は、二正面作戦の悲劇です。

  • 三洋電機:2011年 パナソニックに吸収され、ブランド消滅
  • シャープ:2016年 経営破綻、台湾・鴻海(ホンハイ)傘下

スタック・イン・ザ・ミドル状態の企業は、価格、価値で勝負する競合の攻撃に屈し利益も経営資源も失います。

攻撃元競合の戦略敗北の理由
新興アジアメーカー (LG、ハイアールなど)コストリーダーシップ戦略価格で負ける(規模効果と低コスト構造で勝てない)
国内トップメーカー (ソニー、パナソニックなど)差別化戦略価値で負ける(ブランド、顧客体験で勝てない)

成功企業はやらないことを決めている

戦略とは「戦い」を「略す」。ポーターは、「戦略とは“何をやらないか”を決めること」と説いています。

戦略タイプ代表企業コア戦略「やらないこと」
コストリーダーシップニトリ、ユニクロ低コスト運営と大量販売軍拡=付加価値路線への投資(軍拡)
差別化任天堂、無印良品独自体験・ブランド力消耗戦=価格競争への参加
集中マブチモーター、マキタ限定市場で圧倒的シェア短期決戦=市場拡大を急ぐ

成功する企業は、一つの戦略を選び、他を捨てる覚悟を持っています。

参考文献
 

マイケル・ポーター『競争の戦略』(ダイヤモンド社)