消費者の欲求射抜く 2つの眼〜4Pと4C〜

お客様に価値を届け収益に繋げる基盤

4Pは収益を生むための出発点

事業の目的は、お客様に競合にはない独自の価値を届け、その対価として収益を得ることです。

「お客様に製品やサービスを通じて価値を届けて収益を得るために何をすべきか?」を考える骨組みが4Pです。

『4P』とは?
 お客様に製品を売る時に必要な4つの要素。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)

Product製品売る価値
Price価格売る価格
Place流通売る場所
Promotion宣伝売る方法

1960年にアメリカの経営学者 エドモンド・ジェローム・マッカーシー(1928-2015)が、世に問うた4Pは、お客様に価値を届けて収益を得るための戦略の基盤です。

マッカシーの良き理解者であるマーケティングの権威 フィリップ・コトラー(1931-)は、『マーケティング・マネジメント』で、4Pをこう説いています。

市場提供物の戦略を現実に転換するための組み合わせ

企業が持つ資金、専門知識や技術を持つ人材、設備といった経営資源には限りがあります。

経営資源のペース配分を考えながら、4Pを組み合わせて、お客様に購入していただき利益を得るまでの戦略を考えます。

しかし、4Pには、“誰に”、つまりお客様(Consumer)という主語が欠けていることに注意が必要です。

4Cでお客様の立場を忘れずに

ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)は、1人のお客様が生涯にわたって企業にもたらす利益です。これをお客様の立場で考えると、企業が生涯にわたって届けてくれる価値の総量になります。

製品やサービスの価値は、お客様が認めてくれなくては意味がありません。1993年にアメリカのコンサルタント ロバート・ローターボーン(1936-)が提唱した4Cは、お客様という主語が欠けている4Pを、お客様の立場に反転させた考え方です。

『4C』とは?
お客様が製品を買う時に感じる4つの心理的要素Customer Value(価値)・Cost(コスト)・Convenience(利便性)・Communication(対話 )

Customer Value価値お客様にとっての便益
Costコストお客様にとっての時間・労力・心理的負担
Convenience利便性お客様にとっての買いやすさ
Communication対話お客様にとっての情報発信

イトーヨーカ堂、セブンイレブンの創業者 伊藤雅俊(1924-2023)のことばです。

お客様だったらどう考えるか、何をお求めなのか、値段、品質、味、サービス、いずれもお客様の立場に立って考えれば何が必要かわかるはずです。

たとえば企業は過剰在庫を避けたいのが本音です。しかし、お客様の立場で考えると、お目当ての商品が売り切れていたらどうでしょう?

きっとお客様は失望するでしょう。企業にとっても欠品率が1%上昇すれば、売上が1%減少します。

セブンイレブンは、その日の天候やこれまでの売れ行きデータを元に発注する仮説検証型発注を導入し、過剰在庫と欠品による機会損失のリスクを軽減しました。

さらに100円コーヒーやATMの設置、高齢者向けの移動販売、ネット販売など、お客様の欲求に応えるサービスで不動のポジションを築きます。

4Pと4Cは、フィルムのネガとポジのような関係です。補完しあうことで、お客様の欲求を満たす魅力的な商品とサービスを届ける基盤を作ります。

参考文献
 

フィリップ・コトラー他『フィリップ・コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版)

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティングマネジメント」(丸善出版部)

ヤン・カールソン『真実の瞬間―SASのサービス戦略はなぜ成功したか 』(ダイヤモンド社)

バーント・H・シュミット『経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力』(ダイヤモンド社)

山口周『ビジネスの未来』(プレジデント社)