客離れ 防げば上がる 利益率
〜1対5の法則・5対25の法則〜

収益増加のカギは既存顧客が握ってる!

既存顧客の維持にかかるコストの秘密

「新規顧客獲得と既存顧客維持の一体どちらを優先すべきか?」この問題は、いつの時代も経営者の頭を悩ませます。

アメリカの経営コンサルタント フレッド・ライクヘルド(1952-) が唱えた 1対5の法則は、新規顧客を獲得するには、既存顧客維持の5倍のコストがかかるという法則です。

『1対5の法則』とは?

新規顧客の獲得には、既存顧客を維持する5倍のコストがかかるという法則

新規顧客も既存顧客のどちらも重要ですが、安定的な経営には、利益の確保が絶対条件です。

利益面から考えると新規顧客は獲得コストが高いため利益率が低いことがわかります。これに比べ、既存顧客の維持コストは新規顧客獲得の1/5で済みます。

このことから購入経験のある既存顧客を大切にすることは、資金や人材に制約のある中小企業にとって、収益向上への近道といえます。

しかし、既存顧客の維持だけでは企業の成長はありません。既存顧客の購買頻度を高めるとともに、将来に向けて新規顧客を増やすことが必要です。

削減したコストを投資に回して収益アップ

  1. 将来に向けた新規顧客の獲得
  2. 商品やサービス向上のための品質改善
  3. 情報発信の強化

削減したコストを、新規顧客の獲得と、既存顧客の購入数・購入頻度を高めるための品質改善、関係を強化するための情報発信に投資することで、持続可能な成長を促進できます。

既存顧客の離反率を下げて、収益を増加させる

多くの経営者は、「あの時、あのお得意様さえ離れなければ」という苦い経験を味わっているはずです。

ライクヘルドは、既存顧客の離反率をわずか5%下げるだけで、収益が25%増加すると主張します。これが5対25の法則です。

『5対25の法則』とは?
顧客離れを5%改善すれば、利益率は25%改善されるという法則

もちろん事業モデルや業界のコスト構造によって利益改善率は異なります。

それでも顧客の離反を最小限に抑え、利益を確保するために、既存顧客を大切にし、関係を深めることに異論はありません。

限られた経営資源を新規顧客獲得とのバランスを取りながら、既存顧客維持に配分することが収益を増やすポイントです。

コラム  イタチの道の教訓
  馴染みの常連客がぱったり顔を見せなくなることを、イタチの道やイタチの道切りといいます。2度と同じ道を通らないというイタチの習性が由来です。

一度、離反した離反客を取り戻すことは容易ではありません。既存顧客の離反の最小化は事業規模を問わず大きなテーマです。

参考文献

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー「マーケティング・マネジメント」(丸善出版部)

佐藤尚之『ファンベース』(筑摩書房)

西岡杏『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』(日経BP)

鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)