お客様の真因をつかみ価値をつくる 〜N1分析

N1分析とは?

N1分析とは、実在する特定の1人のお客様を深く分析し、その購買行動の背景にある深層心理や未充足のニーズを特定する方法です。

経営コンサルタントの西口一希氏が示したこの手法は、統計データの平均値では見えてこない矛盾をあぶり出すことに主眼を置いています。

人はアンケートで「健康が大事」と答えながら、夜中にジャンクフードを食べてしまいます。この矛盾の中にこそ、ビジネスを爆発させるヒントが隠されています。

価値は「選んだ理由」と「他を選ばない理由」で決まる

製品が価値を持つのは、お客様がお金を支払った瞬間です。その判断基準は、次の2つの問いに集約されます。

  1. なぜ、それを選んだのか?
  2. なぜ、他(競合)を選ばなかったのか?

統計から作った架空のペルソナは語源のとおり“仮面”にすぎず、お客様の感情や生活までは映し出せません。

実在する1人のお客様の声に耳を澄まし、背景や気持ちを理解することで、企業とお客様の間の価値のミスマッチを防ぎ、競合には真似できない独自価値が生まれます。

 1人のお客様の先にいるお客様

ヒントは、商店街の八百屋のおかみさんの毎日の商いにあります。

八百屋のおかみさんのN1分析

  • N1:常連の働くお母さん(仕事で疲れつつも、子供には手料理を食べさせたい母親)
  • 潜在的悩み:レトルト食品への罪悪感と、調理時間の不足
  • 生み出した価値(WHAT):子供と一緒に短時間で作れる「下ごしらえ済み野菜セット」
  • 独自性の根拠(WHY):野菜への深い愛情と、子育てと店を両立してきた実体験

1人の悩みを解決する価値は、同じ境遇にいる数万人のニーズへと繋がります。一見、ニッチに見える洞察こそが、巨大な市場を動かすきっかけになるのです。

データでは追えないお客様の満たされていないニーズを特定するために、次のプロセスを踏みます。

  • 観察: 表情、動き、雰囲気など、言葉にならない非言語情報を読み取る
  • 対話: 雑談を通じて、生活背景や感情が動いた瞬間を探る
  • 仮説検証: 「この状況ならこれが喜ばれるはず」という未来の体験を提案する

データでは追えない購入の動機(背景の文脈)を特定することが、模倣困難な競争優位性と長期的利益の源泉になります。

参考文献
 

西口一希『ビジネスの結果が変わるN1分析』(日本実業出版社)