「ドリルを売るな、穴を売れ」ではマキタは何を売っているのか?
マーケティングの基本とされる格言「ドリルを売るな、穴を売れ」は、製品の価値を“機能”ではなく“得られる結果”で捉える考え方です。
では、電動工具の世界的メーカー マキタは、何を売っているのでしょうか?
お客様は一体なにを買っている?
ベネフィットとは、その製品を通じて得られる価値・変化・理想の状態のことです。
マキタの電動工具は、工事現場から家庭まで幅広く支持されています。
ここでは DIYを楽しむお客様を例に考えてみましょう。
お客様が欲しいのは、ドリルそのものではありません。欲しいのは次の2つです。
- 棚を作るという体験
- その棚によって部屋が整う未来の快適さ
マキタは、使いやすさ・信頼性・安心感” を届けることで、お客様が望む未来を実現します。
- 作業がスムーズに進むという安心感
- 自分の手で理想の空間を作れる達成感
- 完成した棚がもたらす生活の変化
ドリルの機能は “目的を叶えるための手段” 。お客様が買っているのは、マキタが叶えてくれる未来の体験です。
マキタは一体何を売っている?
経済学者 セオドア・レビットの名言「ドリルを売るな、穴を売れ」に立ち返ると、お客様が求めているのは穴そのものではなく、作業の快適さや思い通りに仕上がる満足感です。
マキタが売っているのは、電動工具ではなく 暮らしと仕事をより便利にする主として4つの価値です。
- 初心者が「自分でもできる」と思える操作の安心感
- リピーターが「やっぱりマキタ」と感じる仕上がりの信頼
- 作業効率が上がることで節約できる時間と労力
- 家庭でも現場でも使える“プロ品質”の体験
リチウムイオンバッテリによる充電化を推進し、脱炭素社会に貢献するという“地球規模のベネフィット”も生み出しています。
これらの価値の積み重ねによって、マキタは世界中で選ばれるブランドとなり「世界のマキタ」と呼ばれる存在へ成長してきました。
お客様はモノではなく、その先にある未来の体験を買っています。
企業が伝えるべきは、機能ではなく「この製品を使うとどう変われるか」というベネフィットです。
マキタの成功は、その本質をわかりやすく証明しています。
セオドア・レビット『T.レビット マーケティング論』(ダイヤモンド社)
西口一希『マーケティングを学んだけど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)

