無意識の意識に 人は操られ
〜プライミング効果〜

プライミング効果

無意識の記憶の力で収益をアップ!

事前情報と人間心理

人には不思議な感覚があります。それほど関心を持たずに聞き流していたことばが、ふと何かの瞬間に甦えることがあります。

プライミング効果は、バイアスの一つで、あらかじめ接触した情報が、後の意思決定や行動に無意識に影響を及ぼす心理現象です。

『プライミング効果』とは?

あらかじめ接触した情報が、後の意思決定や行動に無意識に影響を及ぼす心理現象

人が『⬜︎肉⬜︎食』という言葉に触れた場合、それに対する連想は事前の状況によって異なります。

たとえば、戦国時代の権謀術数を描いた歴史小説を読んだ後に、敵対的企業買収についての記事に接したら、『弱肉強食』という連想が浮かび、朝の通勤時間に、ネット上で「ランチ特集」をチェックしたら、ランチタイムに『焼肉定食』が頭に浮かぶでしょう。

これらの連想は、個人が接触した情報に基づいて無意識の意識から生まれます。連想を引き起こす刺激を先行刺激(プライマー)といいます。

無意識の意識が購買に及ぼす影響

行動経済学の権威 ダニエル・カーネマン(1934-2024)とエイモス・トヴェルスキー(1937-1996)が、バイアスの一つとして、つきとめたプライミング効果を、販売戦略に組み込むことは、収益を確保する一助になります。

商品やサービスに関するイメージは、テレビCMや店頭POPなど、さまざまな顧客接点を通じて人々の心に浸透し、顧客接点で得た情報が、後の購買意思を決定づけます。

なぜなら人は記憶にインプットされたキーワードから特定の商品を思い浮かべるからです。

ビールを例にすると、「キレ」や「鮮度」というキーワードからアサヒのスーパードライ、「コク」や「芳醇」からサッポロのエビスビールを連想するでしょう。

つまり、お客様の脳の中で無意識にブランドの識別が行われているのです。

プライミング効果を最大限に活用するためには、オンラインとオフラインのメディアを結びつけ、競合他社との違いを一貫性のあるメッセージで顧客に伝えることが不可欠です。

この効果により、商品のイメージがお客様の無意識の意識化に深く刻まれ、購買行動に影響を与えることでしょう。

コラム  世界初の百貨店が仕掛けたプライミング効果
  時は19世紀。ボン・マルシェは、1852年、パリに開店した世界初の百貨店です。ボンマルシェでは、子供たちに当時としては珍しいカラーの絵葉書を配りました。来店することで12枚1組のシリーズの完璧なコレクションを作ることができます。

絵葉書欲しさに、母親にせがんで来店頻度を高める一方で、子供は未来の顧客です。子供の無意識に「ボン・マルシェで買い物をしている家の子供は幸福だ」と刷り込み、ボン・マルシェに誘導したのです。

参考文献

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)

リチャード・セイラー『実践行動経済学完全版』(日経BP)

鹿島茂『デパートを発明した夫婦』(講談社)