無意識の記憶の力で収益をアップ!
神田駅の発着メロディの秘密
人には不思議な感覚があります。それほど関心を持たずに聞き流していたことばが、ふと何かの瞬間に甦えることがあります。
プライミング効果とは、事前に接触した情報が、後の意思決定や行動に無意識に影響を及ぼす心理現象です。
あらかじめ接触した情報が、後の意思決定や行動に無意識に影響を及ぼす心理現象
JR山手線神田駅で流れる発着メロディは、アース製薬のモンダミンのCMジングルです。おなじみの「お口くちゅくちゅモンダミン♪」というメロディが、「帰りにモンダミンを買おうかな」という欲求を引き起こすのです。この行動心理は、人が無意識のうちに先行刺激された情報に反応している結果といえます。
無意識の意識が購買に及ぼす影響
製品のイメージは、テレビCMなどを通じてお客様の脳に記憶されます。お客様は記憶にインプットされたキーワードから特定の製品を思い浮かべます。
つまりお客様の脳内で無意識にブランドの識別が行われているのです。ビールを例にすると、「キレ」や「鮮度」というキーワードからアサヒのスーパードライ、「コク」や「芳醇」からサッポロのエビスビールを連想するでしょう。
行動経済学の権威 ダニエル・カーネマン(1934-2024)とエイモス・トヴェルスキー(1937-1996)が解明したバイアス プライミング効果を、販売戦略に組み込むことは、収益を確保する一助になります。
子供が絵葉書欲しさに母親に「ボン・マルシェに連れてって」とせがめば来店頻度が上がり収益に繋がります。そして、その子供は未来の顧客でもあるのです。子供のうちから「ボン・マルシェで買い物をしている家の子供は幸福だ」と刷り込み、ボン・マルシェに誘導したのです。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
リチャード・セイラー『実践行動経済学完全版』(日経BP)
鹿島茂『デパートを発明した夫婦』(講談社)