権威の発言を信じてしまうあなたへ

マケの門

3分でわかる『権威性の法則』

人は、なぜ権威のある者に従うのか?

「権威の言うことは間違いない!」

人は、専門家や成功者など権威を持つ人物の発言を信じやすい傾向にあります。発言した人物の肩書きを見て、疑念を抱くことなく発言をそのまま正しいものとして受け取ってしまいます。

権威の発言を、信じてしまうのは無意識に、権威の持つ地位や名声への信頼が、話した内容そのものの信頼へと変わってしまうからです。

人は、専門家や権威のある立場にいる人の判断に従うものだ

アメリカの社会心理学者、ロバート・B・チャルディー二(1945-)の著書『影響力の武器』の中のことばです。“権威のある人に従う”という人間の無意識下で生まれる心理を『権威性の法則』といいます。

成功者が持つことばの説得力

“誰が言ったか?”は、人の心を動かす重要な要素です。

やってみなはれ サントリー創業者 鳥井信治郎

普通の人が「やってみなはれ」と言ったら「 人に言う前に、お前こそ『しっかりやりなはれ』だよ、まったく!」と相手に言い返されてしまいます。

ところが、たった1行が人の行動を変えます。

同じ「やってみなはれ」という発言なのに『サントリー創業者 鳥井信治郎』という1行が、人の心に大きな変化をもたらすのです。

日本に洋酒文化を実らせ、洋酒・ビール・お茶系飲料・健康食品の一大メーカー サントリーの礎を築いた鳥井信治郎の「やってみなはれ」に触発され「よし、やるぞ!」と前向きな心になります。これが成功者という権威が持つことばの説得力です。

王さんと半世紀変わらぬキャッチコピー

広告に権威のある人の言葉を添えるだけで、信頼感が生まれます。人物のステータスが高ければ高いほど説得力を増して、より信憑性が高まります。

ナボナはお菓子のホームラン王です。

ナボナでおなじみの亀屋万年堂のキャッチコピーは、あなたの記憶に残っているのではないでしょうか?

福岡ソフトバンクホークス会長の王貞治(1940-)が、現役時代に出演したTVCMのキャッチコピーです。 1967年から半世紀以上に渡って使用されているキャッチコピーの“不動の4番打者”のような存在です。

初の国民栄誉賞を受け、誰もが認める人格者である“世界のホームラン王”王貞治の推奨には、説得力があります。だからこそナボナは「東京銘菓」として人々に愛されているのです。

『ナボナ』同様『森の詩』もよろしく

CMの最後で王さんに、ダメを押されたら『ナボナ』のみならず『森の詩』も買わないわけにはいきません。この力こそが権威の及ぼす力です。

“鬼平”池波正太郎の「旨いっ」の一言に思わず納得!

作家 池波正太郎が愛した天ぷらの店

『鬼平犯科帳』でおなじみの作家 池波正太郎(1923-1990)は、生前、食通として知られていました。

池波正太郎というネームバリューは「あの味にうるさい池波正太郎が足繁く通った店の天ぷらならおいしいに決まってる」という印象を与えます。実際、池波正太郎の食にまつわるエッセイを読んだ読者が店に足を運び繁盛店になった店も少なくありません。

制服がもたらす絶大なる影響力

制服は、人の行動を変える!

人は纏った制服の僕(しもべ)となる

ナポレオン・ボナパルト(1769-1821)のことばです。兵の数が足りない時に、農民を兵に加えるように指示した時に言ったことばです。軍服に身を包んだ農民は戦闘経験が無いのに奮闘し兵士に劣らぬ活躍をしました。

人は、制服に袖を通すと、制服に抱いているイメージどおりの行動をしようとします。

人々は制服を着ている人物一目見れば、その職業をイメージする事ができます。野球やサッカーの名門チームで活躍する選手のユニホーム姿に憧れを抱き、警察官の制服には医師の白衣に安心感や信頼感を感じます。

医師という権威の象徴・白衣の影響力

医師が薦める健康法は、「適度な運動」と「栄養をきちんと摂取する事」と、大抵はいたってシンプルなものです。あなたも普段から健康を気遣うご家族から口を酸っぱくして言われているのではないでしょうか?

東大医学部教授が奨める健康法

家族に言われれば「わかっているよ、うるさいなぁ」と軽くいなします。しかし白衣に身を包んだ東大医学部教授の「お墨付きの健康法」となれば、あなたの態度も変わります。

医師という権威の象徴である白衣は、このシンプル極まりない健康法に説得力と安心感を醸し出します。あなたは白衣の持つ影響力の虜となり「健康に注意しよう」と自重します。

人の権威に対する意識を突いた許せぬ犯罪

帝銀事件と3億円事件。この戦後2大未解決事件には、共通項があります。

1948年1月26日、東京都豊島区の帝国銀行椎名町支店に、「防疫消毒班」の腕章をした東京都衛生課員と称する男が訪れます。「近所で集団赤痢が発生したから予防薬を飲んでください」と行員に青酸カリを飲ませ、12人を毒殺し現金と小切手を強奪します。

1968年12月10日、東京都府中市内で白バイ警官がボーナスを輸送中の現金輸送車を呼び止めました。「輸送車に爆発物が仕掛けられています」と言われ、運転手が降りたところ、白バイ警官は、現金輸送車を運転して3億円の現金と共に師走の街へと消えました。 

その共通項とは、肩書と制服という権威の象徴です。帝銀事件では”腕章と東京都衛生課員“、3億円事件では“白バイと警察官”が権威の空気を醸し出し、被害者は犯人の言うことを無条件に信じてしまいました。“権威のある人に従う”という人間の無意識下で生じる心理を最大限に利用した許されざる犯罪です。

参考資料
 

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(早川書房)

リチャード・セイラー『実践 行動経済学』(早川書房)

ロバート・B・チャルディー二『影響力の武器』(誠信書房)

ダニエル・カールマン『ファスト&スロー』(早川書房)

松本清張『日本の黒い霧』(文藝春秋)