誤解も価値も生む心理効果の謎
人はみな 最初に見たものに 縛られる
アンカリング効果とは最初に見聞きした印象や数字が意思決定に深く影響を与える心理です。
人はアンカーという最初の情報に引っ張られ、価値判断の基準を決めてしまいます。
まず数字。通常価格12,000円が特別価格10,000円の表示を見れば「2,000円もお得!」という気持ちになります。
次に印象。歌舞伎役者の襲名披露。つい先代の芸を重ね合わせます。そこには「先代はよかったねぇ」という無意識のアンカーが働いています。

1979年、日本映画史に残る『影武者』主役交代事件。
勝新太郎(1931–1997)に代わり仲代達矢(1932-)が主役を務めます。勝新太郎の強烈なインパクトがアンカーとなり作品全体の評価に影響を与えました。
名優 仲代達矢の「あなたは勝さんの『影武者』を観たのですか?」という発言は、先入観の根深さを象徴しています。


高級パンのヒットと失速の理由とは?
高級食パンブームでの一般的な食パンが160円で買える中、1,000円の価格設定は衝撃的でした。
素材や限定性などの付加価値が、価格への新たなアンカーになりました。
しかし食パンの正式な名称は主食用パン。「食パンは日常食」という長年のアンカーが、再び力を取り戻した構図は、アンカリング効果の根強さを象徴します。
アンカーが強固だと、人はそこから逃れるのは難しいもの。だからこそ「最初の印象」をいかにつくるかが勝負です。
誰にでも「なるほど!」と直感的に伝わる、具体的で鮮明なイメージを打ち出すことが、行動を引き出す鍵となるのです。



『アンカリング効果』とは?
最初に見た印象や数字が意思決定に影響を与える心理現象
参考文献
- ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)