買ったわけ 最初の印象? 見た値段?

3分でわかる『アンカリング効果』

“普段なら手を出さない価格帯” に お客様の心はこう動く

なぜだろう? 心に残る あの印象

『アンカリング効果』とは、あなたが無意識に最初に見た印象や数字に縛られて意思決定を行う行動心理です。

アンカリング効果とは?

アンカーと呼ばれる
最初に見た印象や、示された数字などの情報を元にして
意思決定を行う行動心理

鳥は生まれて一番最初に見たものを、刻印のように記憶して、自分の親だと思い込むそうです。私たち人間にも同じような動物的本能があります。人の脳内には、アンカーと呼ばれる最初に見たものの印象が強く刻まれます。

さて、あなたがお店でよく見かける特価表記には、なぜバツ印を付けた通常価格が一緒に表示されているのでしょうか?

その理由は、お店が『アンカリング効果』を狙っているからです。左の値札のように特別価格だけを表示しても、“お得感”は今ひとつです。

ところが右の値札は、バツ印の付いた通常価格がアンカーとなるため、特別価格をおトクに感じます。あなたが右の値札を見て「おっ!いつもよりおトクだな」と、心が動いた時の感情が『アンカリング効果』の基本原理です。

高くても あの商品を 選ぶわけ

マーケティングの目的は、お客様の脳内にあなたの会社の商品の印象を刻み付けて購買させることです。

あなたの会社が新商品を世に問う時、既にお客様の脳裏に残っている既存商品の印象を凌ぐインパクトが必要です。

『俺のベーカリー&カフェ』の『銀座の食パン~香~』は1斤1,000円という食パン市場には無かった価格帯です。しかしお客様は必ずしも価格をアンカーにしません。お客様の心には『銀座の食パン〜香〜』というブランドから受けた印象が記憶に最初に刻まれます。

お客様の記憶に刻まれたアンカー
  • 数量限定という希少性
  • 銀座や自由が丘など人気エリアに抱く特別感
  • 雰囲気のよいイートインスペース etc.

オシャレな雰囲気をウリにするスターバックスコーヒーのドリンクが、高めの価格帯でも割高に思われないのも同じ理由です。『俺の』は『俺のイタリアン』とは真逆の高価格&高価値戦略により『銀座の食パン~香~』で、食パン市場に「高級食パン」という新しいポジションを築きました。

コラム 『影武者』の主役交代騒動

黒澤明監督の『影武者』主役交代事件は日本映画史に残る出来事です。人の心には『アンカリング効果』が働き、最初の主役 勝新太郎の強い印象に引き摺られ、作品に対する評価まで歪めてしまいました。

代役を務めた仲代達矢は公開当時に一部から批判され、公開から40年以上経った今も否定的な意見が少なからず見受けられます。しかし仲代達矢の「あなたは勝さんの『影武者』を観たのですか?」というコメントが、ことのすべてを物語っています。

参考文献
  • ダニエル・カーネマン『NOISE 』(早川書房)
  • ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
  • ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』(早川書房)
  • 松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新橋出版)
  • 坂本孝『俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 』(商業界)
  • 岸本拓也『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人 』(CCCメディアハウス)