3分でわかる『アンカリング効果』
「わっ こんなの、はじめて」新しい価値に お客様の心はどう動く?
なぜだろう? 心に残る あの印象
人が最初に見た印象や数字に縛られて意思決定を行う行動心理を『アンカリング効果』といいます。
『アンカリング効果』とは?
最初に見た印象や、示された数字などの情報を元に意思決定を行う行動心理
鳥は生まれて一番最初に見たものを、刻印のように記憶して、自分の親だと思い込むそうです。
私たち人間にも同じような動物的本能があります。人の脳裏には、アンカーと呼ばれる最初に見たものの印象が強く刻まれます。
高くても あの商品を 選ぶワケ
食パンはパン市場の6割を占める定番の商品です。お客様の心には「食パンって味はどこも同じね。値段はスーパーの特売で大体160円くらい」という、自分がよく知っている印象や数字を元にしたアンカーがあります。
さて、高品質&高価格で食パンの常識を打ち破った商品が、俺のベーカリー&カフェの『銀座の食パン~香~』です。
1,000円の食パンは、普段160円程度の食パンを購入している人にとっては高価格です。しかしお客様は必ずしも頭に残る160円をアンカーにしません。
「わっ こんなの、はじめて」と『銀座の食パン〜香〜』という未知の商品に接した時、商品から最初に受けた強い印象をアンカーにします。

お客様の記憶に刻まれたアンカー
- 数量限定という希少性
- 銀座や自由が丘など人気エリアに抱く特別感
- 雰囲気のよいイートインスペース etc.
お客様の心は、これらの体験価値に強く惹かれます。俺のベーカリー&カフェは、上質なひと時を過ごせる体験を提供し、市場に高級食パンという新ジャンルを確立しました。
コラム 『影武者』の主役交代騒動
黒澤明監督の『影武者』主役交代事件は日本映画史に残る出来事です。人の心には『アンカリング効果』が働き最初の主役 勝新太郎の強い印象に引き摺られ、作品に対する評価まで歪められます。しかし仲代達矢の「あなたは勝さんの『影武者』を観たのですか?」というコメントが、ことのすべてを物語っています。
参考文献
- ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
- リチャード・セイラー キャス・サンティーン『実践行動経済学 完全版』(日経BP社)
- 松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)
- 坂本孝『俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 』(商業界)