あなたは買ったのか?買わされたのか? 心の中でまっすぐ動く『一貫性の原理』

マケの門

あなたの心は、ブレているようでブレていない

なぜ人は習慣や言動を貫くのか?

毎日の朝の通勤。あなたは、いつも同じ時刻、いつも同じ車両。乗るドアの位置も決めているのではないでしょうか?

あなたのまわりは、いつもと同じ顔ぶれです。「あの人の前に立ったら座れるな」と学習したり、たまに顔を合わさないと何だか心配になったりします。

人は、普段から続けている習慣や自分が言ったことを、そのまま貫きたいという強い意思を持っています。この心理の正体が『一貫性の原理』です。

人が『一貫性の原理』を貫く理由は2つあります。

1つ目は、人は面倒な選択を嫌うからです。ルーティンに従って行動することが楽だから“こんな場合はこうしよう“と無意識のうちに自分の行動をパターン化して一貫性の状態をキープするのです。

2つ目は、「あの人は信用できる人間だ!」と思われたいからです。社会では言うこととやることが一致した“言行一致”の人が尊敬されます。と行動がバラバラだと「あの人の言うことはいつも違う」と、まわりの評価はガタ落ちですからね。

『一貫性の原理』を貫く2つの理由

毎日の行動をパターン化して楽をしたい

「あの人は信用できる人だ」と思われたい

あなたは買ったのか? 買わされたのか?

小さなお願いに軽い気持ちで応じたら

あなたは、お店で店員さんに「簡単な説明だけでも」と誘われるままに、お手頃な値段の商品を奨められ軽い気持ちで購入したら、それだけで終わらず、高額の商品を奨められるままに購入し、とんだ散財をした経験はありませんか?

あなたが思わぬ散財をしてしまったのは、『一貫性の原理』を語る上で、絶対に外すことができないセールスの古典的手法「フット・イン・ザ・ドア」の影響です。

フット・イン・ザ・ドア

人は、『一貫性の原理』が働くと、相手の小さなお願い事に同意した後は、徐々にお願い事が大きくなっても同意しがちになる。

アメリカの心理学者 ロバート・チャルディーニ(1945-)は、著者『影響力の武器』の中でレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)のことばを紹介しています。

最初に断る方が最後に断るより簡単だ

確かに天才 ダ・ヴィンチの言う通りです。しかし『フットフット・イン・ザ・ドア』には、小さな要求の段階で、なかなか拒絶できない不思議な力があります。

だからこそ訪問販売の全盛期に「お話だけでも!」と、ドアに足を挟み込むテクニックが由来の『フット・イン・ザ・ドア』は、セールスマンの間で、長きに渡り伝承されてきたのでしょう。

PCの上位機種を買ったあなたの心理

あなたは、店員さんに奨められるままに「これを買うぞ」と決めたPCの機種より高額な上位機種を購入した経験はないでしょうか?

あなたが上位機種を買った理由は、「買う」と決めた行動に一貫性を保とうするあなたの心に、より優れた高額な商品を奨める販売手法『アップセル』が刺さったからです。

アップセル

商品の購入を考えている見込み客に対し、より優れた高額な商品を奨める販売手法

“ついで買い”をしたあなたの心理

毎日行くコンビニ。今日は、お互いの顔を認識し二言三言ことばを交わす店員さんがレジにいます。会計の時、店員さんはにこやかに「今度、新しく◯◯味の“からあげ”が出たんですよ!おひとついかがですか?」とレジ前の新商品を奨めます。

ハンバーガーチェーンの「ご一緒にポテトもいかがですか?」のフレーズでおなじみの定番手法です。売り込みに対して抵抗感が緩む会計前の瞬間を狙って別の商品を奨める『ダウンセル』です。緊張は緩んでも無意識の内に『一貫性の原理』だけは働いているので、あなたは“ついで買い“をしてしまうのです。

ダウンセル

商品の購入を決定した客に対し、関連商品など別の商品を奨める販売手法

アップセルとダウンセルは『一貫性の原理』を利用して人の心を無意識のうちに動かして顧客単価を引き上げる販促手法です。

『一貫性の原理』の力

アメリカのダイレクト・マーケティングの第一人者 ジョセフ・シュガーマン(1938-)の著者『シュガーマンのマーケティング30の法則』の中のことばです。

いったん最初の購買決定をした客はそれまでの行動の延長線上で行動しようとする

人の心には「一度買う」と決めると『一貫性の原理』が働きます。さて、あなたも私も買ったのでしょうか?それとも買わされたのでしょうか?

参考資料
 

ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)

ミシェル・バデリー『エッセンシャル版行動経済学』(早川書房)

ジョセフ・シュガーマン『シュガーマンのマーケティング30の法則』(フォレスト出版)

リチャード・セイラー『実践 行動経済学』(日経BP社)