お客様 心がわかれば 維持できる〜スイッチングコスト〜

そもそもスイッチングコストとは?

スイッチングコストとは、お客様が現在利用している製品・サービスから他社へ乗り換える時に発生するお金・手間などの心理的ストレスです。

スイッチングコストを「縛り」から「愛着」へ転換することが、持続可能なブランド戦略です。

不満があってもお客様が離れない理由

お客様が不満を抱えていても離れないのは、心の中で3つのコストが重なり合っているからです。

  • 金銭的コスト:違約金・初期費用などの金銭負担
  • 物理的コスト:手続きや設定変更にかかる時間と労力
  • 心理的コスト:慣れた環境を手放す不安や抵抗感

政治の世界で内閣支持率が低くても選挙で与党が勝つことがあるのは、現状への不満よりも変化への不安が勝るためです。

事業でも継続利用 = 満足とは限らないことを直視する必要があります。

お客様を「縛る」のではなく「惹きつける」

スイッチングコストには、お客様が仕方なく継続するネガティブ型と自発的に継続するポジティブ型の2種類があります。

区分動機特徴ブランドの強度
ネガティブ「損したくない」違約金や手間で“仕方なく”継続脆い(代替品に弱い)
ポジティブ「これが好き」愛着・共感で“自ら”選ぶ強い(ファン化する)

強いブランドは、お客様を縛るのではなく、愛着によって選ばれるポジティブ型です。スターバックスは、家庭でも職場でもないサードプレイスという体験価値でコーヒー以上の愛着を生み、お客様の心を掴んでいます。

さて、自社のサービスはお客様を魅力で虜にしているでしょうか? それとも囲い込みで檻に閉じ込めているでしょうか?

【A:ネガティブな縛り】

  • [ ] 解約方法が分かりにくい
  • [ ] 契約更新を自動化。しかも価値訴求が不十分
  • [ ] 違約金など「損失回避」を継続理由にして縛る

【B:ポジティブな絆】

  • [ ] 使い続けるほど体験価値が高まる
  • [ ] 期待を超える体験を定期的に届けている
  • [ ] 解約はスムーズだが、離れたくない価値がある

Aが多い:お客様の心は「心理的な檻の虜」に陥っている可能性があります。

Bが多い:お客様の心には健全なスイッチングコストが育っています。他社に不満を持つ新しいお客様を吸引する魅力も備えています。

お客様に「ここでしか得られない体験」を届けることが長期利益を築く最強の顧客維持戦略です。

参考文献

フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー『マーケティングマネジメント』(丸善出版部)