お客様の心に代替不可能な価値を築く手段
ブランドは信用と時間の積み重ね
ブランディングとは、企業が自社の商品やサービスと他との違いを、はっきりと示し、お客様の頭に残るようにするための施策です。
人には「知らないものは欲しくない」という感情があります。そんな人の心に、欲しい気持ちを作り出すのがブランディングです。
多くの人は高級牛肉の代名詞 神戸牛に惹かれるでしょう。神戸牛は「他の牛肉より高価でも食べる価値がある」と人々が認めているからブランドなのです。
しかし、誰もが知る神戸牛、松阪牛、近江牛というブランド牛は、一夜にして生まれたものではありません。長い年月と労力をかけて生産者が育て上げ、他の牛肉とは違う特別な価値を築いたのです。
つまりブランドとは、信用と時間の積み重ねによって生み出される価値の総体といえます。
ブランドは利益を生み出す大事な資産
国は、独立する際に、自分たちの存在を世界に知ってもらうために、国名や国旗を制定します。
企業も同じです。ブランディングは、お客様に自社の存在を認知してもらい、商品やサービスに「信頼できる!」と感じてもらうことが目的です。
お客様に自社の商品やサービスに対する思いや他の会社との違いを、ストーリーのように分かりやすく伝えることが大切です。
それには、広告や商品のパッケージ、ウェブサイトなど企業がお客様と接触するあらゆる場所で、同じイメージを伝えることが必要です。このことで、お客様は、理解しやすくなり、信頼感が生まれるのです。
2011年、セブンイレブンは、バラバラだった商品のロゴやパッケージデザインを統一しました。
10年以上経った現在でも、お客様は個々の商品は違っていても、一貫性を保つことで、その背後にあるセブンイレブンのブランドを感じています。
ブランドイメージを刷新した、この年のセブンイレブンの既存店売上高の伸び率は、約7%と前年の約2%を更新しました。
ブランドはバランスシートに載らない資本です。しかしブランド価値は、自社の信頼感の向上の証として利益として実を結びます。ブランドへの投資は、企業の持続的な成長と競争優位を築くための重要な要素となるのです。
ブランドの語源は、自分の所有する牛を他人の牛と区別するための焼印 カーフ ブランディングです。
さて、昭和の名レスラー ディック・マードックの必殺技はカーフ ブランディングです。格闘センスに長けたマードックだからこそ仕掛けられる難易度の高い荒技です。時が流れても「マードックといえばカーフ ブランディング」とファンの記憶に残るブランディングのお手本です。
フィリップ・コトラー、ケビン・ケラー『マーケティングマネジメント』(丸善出版部)
鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)
片平秀貴『パワー・ブランドの本質』(ダイヤモンド社)
石井淳蔵『ブランド 価値の創造』(岩波書店)