買ったわけ 最初の印象? 見た値段?
〜アンカリング効果〜

誤解も価値も生む心理効果の謎

人はみな 最初に見たものに 縛られる

アンカリング効果とは最初に見聞きした印象や数字が意思決定に深く影響を与える心理です。アンカーと呼ばれる最初の情報は、後々の判断を方向づけます。

映画『影武者』主役交代事件は日本映画史に残る出来事。当初の主役は強烈な存在感を放つ勝新太郎(1931-1997)です。ところが監督 黒澤明(1910-1998)の逆鱗に触れ降板。黒澤映画の常連 仲代達矢(1932-)が代役を務めます。

しかし勝新太郎の“影”が、仲代達矢の演技を覆い隠し作品の評価まで歪んでしまう現象が起きたのです。

仲代達矢は、「あなたは勝さんの『影武者』を観たのですか?」と問いかけます。

この名優の発言は、アンカリング効果がいかに本質を見えにくくするかを物語ります。

高級パンのヒットと失速の理由とは?

記憶に新しい高級食パンブーム。一般的な食パンが、160円程度の時代に1,000円という価格は衝撃的でした。

しかし数量限定や素材へのこだわり、人気エリアへの出店などの要素が価格を凌駕する価値として、お客様の心を捉えます。

行列ができる人気店が続出しますが、ブームは長く続きません。

食パンの正式な名称は主食用パン。「食パンは日常食」という長年のアンカーが、再び力を取り戻したという構図は、アンカリング効果の根強さを象徴します。


『アンカリング効果』とは?
最初に見た印象や数字が意思決定に影響を与える心理現象

参考文献
  • ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)