0と100の説得力! 確実性効果で売上を伸ばす法
0と100に惹かれる人間心理
確実性効果は、人が確実な結果をもたらす選択肢を好む傾向に基づく心理です。
人は、0や100のような絶対的な数値を、安心や確実性を示す証しとして、意思決定を行います。
多くの子どもが希望する保育施設に入れずにいる待機児童問題は、国や自治体の課題の一つです。自治体が「待機児童ゼロ」を実現すると、保育サービスが充実している街として評価され、育児中の世代は「子育てしやすい街」というブランド価値を感じます。
安心と確実性を訴求する販売手法
行動経済学の権威であるダニエル・カーネマン(1934-)とエイモス・トヴェルスキー(1937-1996)が突き止めたバイアス 確実性効果を理解し、販売戦略に組み込むことは競争優位を築き、収益を増加させる重要な手段の一つになります。
人は、天気予報の降水確率が0%の場合、傘は不要だと判断し、100%の場合は傘を持参します。
この心理は、人々の購買行動にも生じます。商品選択において、人々は0や100など絶対的な数字を基準に安心感を求めます。ダイエット中の人はカロリー0のコーラに安心感を抱き、健康志向の人は、天然果汁100%のジュースに不純物がないと感じます。
ところが、人の判断を迷わせるのが40%の降水確率です。確率は0ではないので「もしかしたら降られるかも」と折り畳み傘を持参する人がいます。
同じように、人は、懸賞キャンペーンに対し、「当選確率は0でないから、私は当選するかもしれない」という心理が働くことがあります。
人は低い確率であっても、好ましい結果が得られる可能性に、一縷の希望を託します。しかも、懸賞キャンペーンに参加するために、商品購入に多額の金額を費やす不合理な行動を取ることがあります。
この心理が、フランスの経済学者モーリス・アレ(1911-2010)が、1952年に唱えたアレのパラドックスです。この学説は、合理的選択を基本とする当時の学界には無視され、後年、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって確立されます。
ダニエル・カーネマン、モーリス・アレらノーベル経済学賞受賞者による行動経済学の理論に基づいた確実性効果は、販売戦略の一部として、消費者心理にアプローチする手段として活用できます。
敵討に成功すれば帰参が許されるだけでなく栄誉の加増が得られ出世の道が開けます。
しかし仇討ちの成功確率は1%だったと言われています。多くの者は旅先で病死、敵討を断念して流浪の浪人生活を送りました。敵討が禁止されたのは1873(明治6)年のことです。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)