3分でわかる『ゴルディロックス効果』
「これなら」と 納得できる 価格帯
人はみな 「ちょうどいい」に 妥協する!
人には3つの選択肢がある時に、真ん中のランクを選ぶ傾向があります。この行動心理を『ゴルディロックス効果』といいます。
さて、あなたは寿司屋のお品書きに価格の順で「松握り 」「竹握り」 「梅握り」の3種類があったら、そこそこ豪華なネタで価格もお手頃な真ん中の「竹握り」を選ぶのではないでしょうか?
人が「松竹梅」を選ぶ割合は、価格の高い順に『2:5:3』と言われています。
「松握り」は、大トロ、うに、イクラと豪華ですが価格がネックです。「梅握り」は価格は安いけれど物足りません。結局、あなたは、ちょうどいい「竹握り」に落ち着きます。
あなたをはじめ多くの人が「竹握り」を選ぶ理由は「間違いのないものを選びたい」という心理が働くからです。
安ければ 「訳ありでは?」と 湧く不安
あなたは、買い物をする時に、価格が高い商品には「高価な物を買って失敗したらどうしよう?」と、価格が安い商品には「安物買いの銭失いは避けたいわ」と、どちらにもリスクを感じるのではないでしょうか?
価格設定にあたっては、人々の価格に対する意識を検証し、どの範囲の価格帯が人々に受け入れられるかを把握することが大切です。
価格を高く設定しすぎると、商品は売れません。
価格を安く設定しすぎても、商品は売れません。
「これ以上高かったら買えないな。ギリギリの妥協点ね」と人々が購入を躊躇する限界の価格を『上限価格』。反対に消費者が「安いのは嬉しいけど何かウラがあるんじゃないの?」と安さに対して不安を感じてしまう価格を『下限価格』といいます。
『上限価格』と『下限価格』の間の範囲が、人々が受け入れる価格帯です。さらに言えば『上限価格』と『下限価格』の真ん中が、多くの人に値頃感を感じさせる『最適価格』であるといえましょう。この『最適価格』が人々に選ばれる『松竹梅』の『竹』なのです。
横並び意識を重んじて無難なものを選ぶ心理と「一番安い物を選ぶのはちょっと恥ずかしい」という心理を持つ日本人の国民性を踏まえると『ゴルディロックス効果』に働きかける価格戦略は、有効なマーケティング施策であるといえましょう。
映画が公開された1960年当時の大卒初任給の平均は13,000円です。報酬が高ければ身の危険を感じるし、安ければとても話しになりません。土屋嘉男が演じた水野が、手頃な報酬に安心感を抱いたように、貨幣価値は変わっても、価格に対する価値観は昔も今も変わりません。
阿部誠『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(新星出版社)