恩恵をお返しすれば、きっとうまくいく!

マケの門

3分でわかる『返報性の原理』

恩を受けたままだと重荷に感じる

人が『恩恵』を大切にしてきた理由

食糧が乏しかった太古の時代、人類は自分が飢えに苦しんだ時に仲間に助けられたから、今度は仲間が飢えた時に助けようと「恩恵」を大切にして生き延びてきました。

人は他人から恩恵を受けると、お礼として何かお返しをしなければ申し訳ない気持ちになります。この昔も今も変わらない人間心理を『返報性の原理』といいます。

『返報性の原理』とは?
 人が、恩恵を受けた時に「お返しをしなくては申し訳ない」という気持ちになる心理

経済学の父 アダム・スミスが説く『恩恵』

経済学の父 アダム・スミス(1723-1790)は、1759年に著した『道徳感情論』の中で“恩を受けた人は恩を返済できるまで良心が疼き、その心理的負い目を払拭するために次は自分がお返しをする。この行為の繰り返しで、思いやりが溢れるよりよい社会が築ける”と、人間の行動を支配するのは他者を思いやる共感であり受けた恩に対しては、その恩に報いて返すことの大切さを説いています。

『国富論』(1776)では「神の見えざる手」と称し人間は“利己心を動機に行動し経済を動かす存在”と主張した『市場原理主義の元祖”』として経済史に名を残したスミスの意外な一面です。

「何かお返ししなければ」という心の正体

人の心理は複雑で、人から何かして貰って嬉しいという感情が「私のためにこんなに時間や労力を割いてくれて申し訳ない」と心理的な負い目へと変換され「何かお返ししなければ」という感情が生まれるのです。しかも「早くお返ししなくては!」とプレッシャーを感じてしまいます。

心理学の権威を悩ませる心の重荷

アメリカの社会心理学の第一人者で、大ベストセラー『影響力の武器』で有名なロバート・B・チャルディー二(1945-)は『影響力の武器』の中で恩義を受けたままの状態を、“恩義を受けたままの状態というのはとても不快なものです。ずしりと肩に食い込むこの重荷を早く下ろしてしまいたいという気になります。“と著しています。

人間心理の表も裏も知り尽くした社会心理学の世界的権威であるチャルディー二を以ってしてもコントロールできない行動心理が『返報性の原理』なのです。

『返報性の原理』は「受けた恩は返さなくては」という誰もが持っている行動心理を購買に結び付けたマーケティング手法として用いられています。義理人情を重んじる日本人の気質を踏まえると『返報性の原理』に働きかける販売戦略は、有効なマーケティングの施策といえましょう。

あなたも「食品の試食販売」「無料体験キャンペーン」など、つい『返報性の原理』に誘導され商品を購入した経験があるのではないでしょうか?

参考資料
 

アダム・スミス『道徳感情論』(講談社)

ロバート・B・チャルディー二『影響力の武器』(誠信書房) 

ルディー和子『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する(日本経済新聞出版)