3分でわかる『社会的証明の原理』
「だって安心なんだもん」みんなと同じにしたがる私たちの心の中
ランキング みんなと一緒の安心感!
『社会的証明の原理』とは、人がランキングや批評サイトの評価などの世の中の多数派が下した結果に「みんなと一緒なら安心!」と同調する行動心理です。

人々がランキングや批評サイトの評価など世の中の多数派が下した結果に同調する行動心理
「おいしい店か? まずい店か?」は、あなた自身の舌で判断すればよいことです。しかし自分の判断に自信が持てない時は、世の中の大多数の意見である「飲食店人気ランキング」の評価を頼ります。この時の、あなたの心が『社会的証明の原理』そのものです。
人は、ランキングには抗えない魅力を感じます。だから心の中では「私は私」と思っていても、就活中の学生は『2万人の就活生が選ぶ人気企業ランキング』に注目し、終活の準備を始めたシニアは『高齢者に優しいシルバーマンションランキング』に身を委ねるのです。
気が付けば 世間の時流に 乗っていた
人は理屈ではなく心で動きます。マーケティングを成功させるためには、人の心を理解することが必要です。
物買って来る 自分買って来る
陶芸家 河井寛次郎(1890-1966)のことばです。買い物とは、本来、自分の感性に合うものを購入することです。しかし、人は必ずしも合理的な行動を取るわけではありません。つい「みんなが買っているから安心」と世の中の空気に従ってしまいます。
みんなが持っているモノが欲しくなったり、みんなが観ている映画が観たくなるのが人の心です。
この一行で世間の時流に乗っかった!
- 売れ筋 第一位!
- 今、売れています
- 観客動員200万人突破!
- みんなが選んだ人気商品 etc
お客様は、これらの一行に心を動かします。購入を迷うお客様に対しては「これを買えば間違いない」という訴求効果があります。既に購入したお客様に対しては「自分の選択は正しかった」という安心感を与えます。
みんなに合わせることを重んじる日本人の国民性を踏まえると『社会的証明の原理』に働きかけることは、有効なマーケティングの施策です。
小津安二郎は、みんなと同じように些細なことは世の中の流れに従い、重大なことは社会の枠からはみ出さないように道徳に従います。しかし芸術のことは自分の信念に従い、移動や俯瞰を用いず徹頭徹尾 ロー・アングルによる撮影スタイルを貫きました。
小津安二郎は低い位置にカメラを据え、流行に影響される庶民の姿を追います。『おはよう』ではテレビを親にねだる子供たち、遺作『秋刀魚の味』では電気洗濯機に憧れる若夫婦を描きました。昔も今も流行に乗ろうとする日本人の資質は変わりません。
ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)
オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(岩波書店)
山本七平『空気の研究』(文藝春秋)
中野信子『脳はどこまでコントロールできるか?』 (ベストセラーズ)