3分でわかる『社会的証明の原理』
「みんなはどうなの?」多数派に影響される私たちの心
ランキング みんなと一緒の安心感!
私たちは、物事を判断する時に、無意識に多数派の意見や行動に影響されることがあります。この心理現象を社会的証明の原理といいます。

「おいしい店か? まずい店か?」は、あなた自身の舌で判断すればよいことです。
しかし、自分の判断に自信が持てない時は「飲食店人気ランキング」を頼ることがあります。多くの人が選んでいるという情報は、安心感をもたらすからです。
この時、あなたの心には社会的証明の原理が働いています。
世の中の流れと個人の感性の変化
物買って来る 自分買って来る
河井寛次郎
陶芸家、河井寛次郎(1890-1966)の言葉です。本来、私たちが購入すべきものは、は自分自身の感性に合ったものです。
しかし感情が理性に勝ることもあります。社会の流れに同調し、多数の選択に引っ張られる心の機微は人間の本性です。だからこそ、「みんなが購入しているから安心」という考え方が広まるのです。
たとえば、あなたは、ネット通販の「おすすめ商品」に心が動くこともあるでしょう。
特に日本人の心には、迎合性が深く根差しています。他者の評価を頼りに物事を判断することに慣れ切っている人が少なくありません。
しかし、価値観の変化に伴い個人の選択には多くの要因が複雑に絡み合っています。消費スタイルもさまざまで、その選択肢も広がりを見せています。
社会的証明の原理をマーケティングに活用する時には、一般論だけでなく、個々の価値観や嗜好の差異を広く理解することが大切です。
なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う。
小津安二郎は、芸術のことは自分の信念に従い、低い位置にカメラを据えるスタイルを貫き『おはよう』ではテレビを親にねだる子供たち、『秋刀魚の味』では電気洗濯機に憧れる若夫婦の姿を追います。昔も今も「みんなが持っているから」と流行に乗ろうとする日本人の気質は変わりません。
ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)
オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(岩波書店)
山本七平『空気の研究』(文藝春秋)
中野信子『脳はどこまでコントロールできるか?』 (ベストセラーズ)