みんなと同じにしたがる私たち これが『社会的証明の原理』の正体だ!

マケの門

ランキング1位に惹かれる人々

ランキング好きな日本人

日本人のランキング好きは、今に始まったことではありません。このことは歴史が証明しています。江戸時代後期には、茶屋の看板娘を競う「茶屋娘見立番付」をはじめ「当世はやり物見立」や「諸国産物見立相撲」など衣食住のあらゆるジャンルにランキングを付けました。

その背景にあるのは、人が生まれながらに持っている「正しい判断をしたい」という欲求です。自分の判断に自信が持てない時には、「社会の大多数の人々が下した判断」を正しい判断として受け入れます。ランキングは社会の大多数の人々が下した判断そのものだからです。

みんなに従う『社会的証明の原理』

Amazonや食べログの星の数

Amazonのランキング上位商品や食べログなどの批評サイトの星の数は、世の中の多数派が下した結果です。これらは、みんなからの支持を集めている人気の証明であるといえましょう。

世の中の多数派が下した結果に同調する行動心理が、アメリカの社会心理学者 ロバート・B・チャルディー二(1945-)が著書『影響力の武器』の中で説いた『社会的証明の原理』です。

自分で何を買うか決められる人は、全体のわずか5%、残りの95%は、他人のやり方を真似する人たちです。ですから、私たちがあらゆる証拠を提供して、人々を説得しようとしても、他人の行動にはかなわないのです

チャルディーニが『影響力の武器』の中で引用したセールスコンサルタント カベット・ロバート(1907-1997)のことばが『社会的証明の原理』のすべてを物語っています。

「私は他人の意見に流される人間ではない」というあなたへ

売れ筋ランキング第1位! 

みんなが選んだ総選挙結果!

「私は他人の意見に流される人間ではない。自分の気に入った物を買うんだ」というあなたも、どの商品を購入すればよいか迷ったあげくに、これらの惹句に目を奪われて、ランキング上位の商品を購入したり、「自分に合ったものを選ぼう」と考えているうちに「みんなは何を選んでいるんだろう?」と他人を気にしてしまうことはありませんか?

この心理こそが『社会的証明の原理』の働きがもたらす作用なのです。

なぜ人は行列に並ぶのか?

「マグロ大王」は落札価格の大きな価値を知っている

新年1月5日の初競りでは『すしざんまい』のマグロの落札価格が話題になります。「マグロ大王」こと社長の木村清社長(1952-)が初競りで一喜一憂する姿は、すっかり新春の風物詩となった感があります。

2019年初セリ 史上最高値更新!!大間産本鮪278kg3億3,360万円落札の店

『すしざんまい』は、店頭や都営バスのラッピング広告で、「2019年初セリ 史上最高の落札価格3億3,360万円」という過去の最高落札額をアピールしています。思わずマグロの握り寿司が、食べたくなりますね。

行列に加わることで得られる安心感

億単位の落札額は、『すしざんまい』の高額でマグロを競り落とす資本力の象徴であるとともに、みんなが「初競りの高価で希少なマグロは、美味しいに決まってる」「安心して食べられる」と判断し行列に加わる『社会的証明』であるといえましょう。

初競り後には「マグロ大王」自らが音頭を取る「マグロ解体ショー」が披露される本店をはじめ、『すしざんまい』の店舗には、開店前からマグロ寿司を食べる順番を待つ長蛇の列ができます。

みんなと同じにしたがる人々の心の中

人は心を軽くしたいから、みんなに従う

人は、商品を選ぶ時に、大勢の人に評価されている商品に安心感を抱きます。みんなが買っているという“事実”に依存することで、心理負担を軽くするのです。

ランキングや星の数が示す”みんなが買っている”という事実は、消費者の背中を押す役割を果たします。

まわりに自分を合わせることを重んじる日本人の国民性を踏まえると、『社会的証明の原理』に働きかける販売戦略は、有効なマーケティングの施策です。

参考資料
 

ダン・アリエリー『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(早川書房)

リチャード・セイラー『実践 行動経済学』(早川書房)

リチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』(早川書房)

オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』(岩波書店)

中野信子『脳はどこまでコントロールできるか?』 (ベストセラーズ) 

井上章一『美人コンテスト百年史 芸妓の時代から美少女まで』(新潮社)