“だるま”是清と“花のピカソ”蒼風! 青山で出会う二つの魂
あんたたち、高橋是清(たかはしこれきよ)さんって知ってるかい?
「だるまさん」なんて愛称で親しまれた、日本の国のために一生懸命働き、総理大臣まで務めたすごいおじいちゃんさ。
そしてもう一人、勅使河原蒼風(てしがわらそうふう)さん。「花のピカソ」なんて呼ばれて、お花の世界に新しい風を吹き込んだ、これまたすごい芸術家さんだねぇ。
二人とも、歩んだ道は違うけど、世間の常識とか「こうあるべき!」なんて考えに囚われずに、自分の道をズンズン進んでいったんだから、本当に感心しちまうよ。
東京メトロの青山一丁目駅から赤坂の方へちょっと歩くと、青山通り沿いに、この二人を偲ぶ場所が隣り合ってあるんだから、不思議な縁だねぇ。
是清さんの大奮闘
昭和の初めっ頃、日本は大変な不景気だったんだよ。
銀行にお金を預けてる人も、「このままじゃお金がなくなっちゃう!」って心配して、みんな銀行に押し寄せるような騒ぎだったんだ。
そんな時に、日銀の総裁や総理大臣までやった是清さんが、3度も蔵相(今でいう財務大臣さんだね)になったんだ。
もうお年なのに、またまた国の借金をなんとかしなくちゃならなかったんだから、大変だったろうねぇ。
でも、是清さんはね、ただ者じゃないんだよ!
赤字の国債をバンバン発行したり、片面だけしか刷ってない200円札を銀行の店頭に山のように積んで、「お金はちゃんとあるから、心配するな!」って、預金してる人たちを安心させたりね。
もう、普通の人じゃ思いつかないような、大胆なやり方で、日本をこの危機から救ったんだ。
七転び八起きのだるまさんって呼ばれるのも納得だねぇ。
そうやって、やっと日本の経済が落ち着いてきた頃、今度はインフレ、つまり物価が上がりすぎるのを抑えようと、是清さんは「国のお金をもっと節約しなくちゃダメだ!」って言い出したんだ。
目を光らせたのが軍事費だよ。
軍隊にお金がかかりすぎてるってんで、予算の会議で「国の財政がしっかりしてこそ、国を守れるんだ!」って、軍の人たちを相手に堂々と自分の意見を通したんだから、本当に筋の通った人だったねぇ。
だけどね、その3ヶ月後だよ。
1936年の2月26日、「二・二六事件」っていう事件が起きて、若い軍人さんの銃弾に倒れてしまったんだ。本当に残念なことだったねぇ。あたしゃ悲しいよ。

“花のピカソ“蒼風の革新
是清さんが、1902年から亡くなるまで暮らしたお屋敷は、今じゃ高橋是清翁記念公園っていう、素敵な公園になって残ってるんだよ。
青山通りを挟んで、天皇陛下のお住まいがある赤坂御所と向かい合っててね、真ん中には池があって、それはもうきれいな庭園なんだから。
さて、同じ1927年だよ。是清さんが国のために奮闘してる頃、勅使河原蒼風さんは、これまでの古臭い生け花とはおさらばして、青山で草月流っていう、新しい生け花の流派を立ち上げたんだ。
この年はね、蒼風さんの長男で、後に有名な映画監督になる3代目家元 勅使河原宏さんが生まれた年でもあるんだってさ。
なんだか、新しいものが次々生まれてきた年なんだねぇ!
蒼風さんの世界へ羽ばたく「いけばな」!
蒼風さんはね、翌年にはさっそく初めての『草月流展』を開いて、一躍注目を集めたんだよ。
その後も「新興いけばな宣言」なんて打ち出して、新しい生け花の形をどんどん発表していったんだけど、戦争が激しくなって、活動は一時中断せざるを得なかった。
ああ、戦争はイヤだねぇ。でもね、戦争が終わると、蒼風さんはまたすぐに活動を再開したんだよ。
今までの生け花じゃ考えられない、枯れ木とか石ころ、鉄の塊なんかも「いけばな」に使っちゃうんだから、本当にぶっ飛んだ人だったねぇ!
『草月流』が世界に羽ばたいた秘密の一つは、家元制度!
伝統的な生け花に新しい考え方を取り入れながらも、日本の昔からの美意識を大切にする精神。
うーん、古いものと新しいものを上手に混ぜ合わせることで、『草月流』っていう、どこにもない特別な価値を作り上げたのかもしれないねぇ。
草月流の拠点 堂々完成!
蒼風さんは、会員さんがどんどん増えていったもんだから、1958年には、草月流の本拠地となる草月会館を赤坂に建てたんだよ。
そこでは、生け花の追求はもちろん、「草月アートセンター」っていう、芸術活動の中心になる場所も作って、長男の宏さんが中心になって、色々なことに挑戦していったんだねぇ。
今の草月会館はね、1977年に、これまた有名な建築家の丹下健三さんが設計して建て直されたんだよ。

時代を超えて
鏡みたいに光るガラス張りの草月会館とお隣の高橋是清翁記念公園の緑と、それはもう見事に溶け合ってるんだから、あんたも一度見に行ってみるといいよ。
公園ではね、草月流とコラボして、色々なイベントもやってるっていうよ。
なんだか、2人が時代を超えて語りかけてくれてるようだねぇ。

【高橋是清翁記念公園】港区赤坂7-2-21
【草月会館】港区赤坂7-2-21
◯最寄り駅はすべて 東京メトロ銀座線 半蔵門線「青山一丁目駅」
幸田真音『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』(角川書店)
小笠原清、梶山弘子『映画監督小林正樹』(岩波書店)
友田義行『戦後前衛映画と文学: 安部公房×勅使河原宏』(人文書院)
山田風太郎『人間臨終図鑑』(徳間書店)