女子プロレスラー 広田さくらは稀代のマーケター

広田さくらのさくら咲く成功戦略

世の中に“答え”は一つではありません。戦略には「考える型」があります。

人気女子プロレスラー 広田さくらさんの歩みを、マーケティングの枠組みを重ねることで、成功のヒントが見えてきます。

1. 同じルールで戦わない道を選んだ — 競争戦略

広田さくらさんの所属したガイアジャパンは、“強さ”で競うレスラーたちが中心。

そこに「笑い」「親近感」「物語性」を持ち込むのは、まさに異なる軸の勝負でした。

ポーターの競争戦略

戦略意味広田さくらの選択
コストリーダーシップ価格で他に勝つ実用的には該当せず
差別化戦略他と違う価値を出す笑い+共感+技術、唯一無二のスタイル
集中戦略絞った市場で戦うコミカル路線というニッチ層に特化

彼女は「差別化」+「集中(ニッチ)」の組み合わせで勝負をかけました。
つまり、全体市場での強さ勝負には行かず、自分が輝く場所を見つけたわけです。

2. 誰に、どんな価値を、どう届けるか — STP分析

戦略において自分が勝てる場所だけでなく、届ける相手と届け方を明確にしないと迷子になります。

STP分析

構成要素広田さんのやり方ポイント(戦略として効く理由)
Segmentation(市場を分ける)強さ重視層/親近感重視層/エンタメ重視層「レスラー=強くあるべき」という固定観念を持つ層とは別方向を狙う
Targeting(狙う対象)親しみ・物語性を求める観客、ライトファン層強さだけでは満たされない“楽しさ”や“心のつながり”を欲している人
Positioning(自分の立ち位置)親近感のあるプロレスラー/笑顔と物語を持つ存在他の強さ系レスラーとは違う “愛され方” を設計する

こうすることで、ただ目立つだけでなく、観客にすっと入っていけるリングを獲得します。

3. 戦う土俵の環境を読む — ファイブフォース分析

戦略は自分たちの内だけで決まるわけではありません。

女子プロレス業界の力を無視したら、どれだけいい戦略も壊れます。

ファイブフォース(5つの圧力)分析で、女子プロレス界の強さ/脆さを読みます。

ファイブフォース分析

フォース圧力広田さくらさんにとっての意味
競合(同業者)他のレスラー、他のエンタメ興行強さ重視レスラーという競合が多い → 差別化戦略の必要性
新規参入の脅威新しい興行団体、新人レスラーの参入参入は比較的ハードルあり。だが、新しい見せ方を持つ人はチャンスあ
代替品の脅威映画、YouTube、他の格闘技などの他のエンタメ興味の取り込み先が多いから、プロレスとしての“+α”が必要
供給者の交渉力リング、会場、技術指導者、スポンサー場所や設備を提供する側の力も強い。交渉力を持つ存在と関係を築く必要あり
買い手の交渉力観客、ファン、テレビ・配信の視聴者ファンが興味を失えば離れる。だから「共感・楽しさ」でファンをつかむ必要あり

この分析から、強さだけでは立ち行かない環境であることが見えてきます。

だからこそ、差別化やニッチ戦略、観客とのつながり強化が成功の鍵になったのです。

4.透明性で物語を紡ぐー共感マーケティング

共感マーケティングとは、お客様の感情に深く寄り添い、信頼を積み重ねて利益と価値を築く手法。

広田さんは、コミカルというジャンルを開拓し、結婚・不妊治療・双子の出産・育児・離婚を経験しました。人生のすべてを隠すことなくリング上で「物語」として昇華させてきました。

キャリア活動マーケティング視点
デビュー期正統派レスラーとしてスタートプロダクト重視(4P)
模索期コスプレ・コミカル路線で差別化ポジショニング/差別化(STP)
円熟期結婚・出産・離婚など私生活を興行化ストーリーテリング感情価値
現在政治活動に進出ソーシャルブランド共感拡張

私生活をさらけ出す透明性が、ファンとの間に深い信頼と強固な共感を築きました。

いま広田さくらさんは政治の世界に挑戦しています。

シングルマザーとしての視点とプロレスで磨いた伝える力で社会課題に向き合います。

この新たな挑戦は「企業は単に利益を追求するだけでなく、社会的な役割を担う存在である」という共感マーケティングの最終形を示しています。

経営視点で見る「戦略の芯」


次に価値、創造性、人という観点から広田さんの戦略を経営理論に結びつけます。

1. CSV経営 社会のためになる仕事とのつながり

CSVとは、「会社が本業を通じて、社会の問題を解決しながら、利益も出す」という考え方です。

広田さくらさんは、シングルマザーという立場から、子育てやジェンダーなどの社会の課題に向き合っています。

  • その経験をリングの上で物語として伝える
  • 観客に共感してもらう
  • 政治活動にも広げている

プロレス × 社会の問題 = 共感+社会貢献 これは「プロレスを通じて社会を良くする」という新しい形です。

2. デザイン経営 自分を見せる力

デザイン経営とは、「見せ方」や「ブランドづくり」を経営に取り入れる考え方です。

広田さんは、自分のキャラクターやスタイルを自ら考えて発信しています。

  • 自作コスプレやマイクパフォーマンス
  • 技のネーミング
  • SNSやYouTubeで自分を伝える
  • 政治活動も「自分の価値を広げる方法」のひとつ

自分というブランドを見せる・伝える・広げる力 これがデザイン経営の中心です。

3. イノベーション “笑い×受け身”=新しい価値

広田さんは、笑いとプロレスの技術(受け身)を組み合わせて、安心して楽しめる新しいスタイルを作りました。

  • 笑わせながら、技術も見せる
  • 観客が安心して見られるけど、本気の試合

違うものを組み合わせて、新しい価値を生む これはイノベーションです。

4.人的資本 体が資本だからこそのリスク管理

プロレスは体が資本。ケガや健康の問題は大きなリスクです。

  • フリーランスだと、団体のサポートも少ない
  • 安定した収入や働き方が課題になる

これは「働き方改革」や「健康を守る経営」とつながります。体を使う仕事だからこそ、リスクへの備えを2024年10月からの長期欠場を経験し痛感しています。

経営視点広田さくらさんの実践戦略的な意味
CSV経営社会課題(シングルマザー・福祉・政治参加)に正面から向き合うリングでのストーリーが社会貢献と結びつく
デザイン経営見た目、キャラクター、発信すべてを自ら設計・発信自分ブランドを一貫してデザインする力
イノベーション笑い × 技術の組み合わせで観客に新しい体験を生む異なる要素を掛け合わせて価値を再構成する力
人的資本自分の体=資本だから、健康・技術・対応力を常に整えるケガ・体調不良リスクを前提としたマネジメント

この4視点を通じて、広田さくらさんの戦略は、単なるパフォーマンスではなく、持続可能な価値の設計であったことが見えてきます。

5. ストーリーでつなぐ戦略の流れを再度追う

  1. 強さの土俵で勝てないと見切る → 別軸(差別化)にシフト
  2. 観客の“感情”を読み、求められる価値を探る → STP を設計
  3. 競合・代替を見ながら、自分に有利な環境を見極める → ファイブフォース分析
  4. 社会やブランド・人を意識し、長期的な価値の設計をする → CSV/デザイン経営/イノベーション/人的資本

この流れが実践できる戦略へと昇華していきました。

3つの出会いが生んだ広田さくらブランド

広田さくらさんのキャリアには、ガイアジャパンの長与千種さん、プロレスリングWAVEのGAMIさん、そして日本維新の会という3つの大きな出会いがありました。

広田さんの成功は、自分の努力だけでなく、周りの人との出会いにも支えられています。

  • 長与千種さん:技術と個性を認めてくれた人
  • GAMIさん:個性を活かせる場を提供してくれた人
  • 日本維新の会:社会とのつながりを広げてくれた組織

この3つの出会いが、広田さくらさんの個人の魅力を社会的な影響力へと育てていったのです。

出会い役割ブランドへの貢献
長与千種さん土台をつくった師匠技術の裏付けと、面白さを認めてくれる環境を与えてくれた
GAMIさん仲間としての協力者コミカルなスタイルを活かせる団体プロレスリングWAVEで、広田さんの個性を定着させた
日本維新の会社会とのつながりを広げた存在リングでの物語を、政治という社会の課題解決へとつなげる場を提供した

広田さんのキャリアは、緻密に設計された戦略の実践です。

彼女の歩みは、以下のような問いに答えるヒントになります。

  • 「どうすれば自社らしさを価値に変えられるか?」
  • 「競争が激しい市場でどう差別化すればいいか?」
  • 「社会課題と事業をどうつなげるか?」