3分でわかるフレーミング効果
患者も医師も “死亡率10%”の 手術には躊躇する
考えてみれば 同じことなのに
同じ情報でも、表現方法によって人の意思決定は変わります。この行動心理を『フレーミング効果』といいます。
スーパー コストコの「牛豚合挽き肉」の人気の秘密は『赤身80%』です。
『赤身80%』と『脂肪分20%』は同じ意味ですが、売行きは異なります。お客様は『赤身80%』という表示から、肉に含まれるタンパク質が多く脂肪分が少ないことを読み取って価値を感じるからです。
挽き肉で作るハンバーグの旨味を引き出す肉汁の素は脂肪です。しかし脂肪ということばをネガティブに感じるのが人の心です。
人はみな ネガティブなことばに 心が揺れる
アメリカの心理学者 ダニエル・カーネマン(1934-)とエイモス・トヴェルスキー(1937-1996)は、医師を被験者にした実験で『フレーミング効果』を立証しました。
術後1か月の“生存率が90%の手術と放射線治療”の選択肢では、84%の医師が手術を選びます。ところが“術後1か月の死亡率が10%の手術と放射線療法”では、50%ずつに分かれました。

実験とはいえ医師も死亡率ということばに心が揺れるのです。だからあなたが患者になった時、死亡率10%の手術に「私もその1人になるかも?」と動揺するのは当然のことです。
同じことばでも受け取る者の立場によって大きく意味が異なります。
国家安康
君臣豊楽
日本史に残る方広寺の鐘銘事件です。豊臣方からすれば、太閤一代の偉業を後世に遺すことばです。
かたや徳川方は「家康の名を切り刻み、呪詛をかけ再び天下を目論むのか」と解釈します。家康・秀忠父子は、鐘銘を口実に大坂冬の陣を起こします。たった8文字を端緒に豊臣家は滅亡しました。
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』(早川書房)
リチャード・セイラー キャス・サンティーン『実践行動経済学 完全版』(日経BP社)
鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)