地下鉄の父、早川徳次は夢追い人!
あんたたち、毎日毎日、ぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って、お仕事ご苦労さんだねぇ。
いまあんたが乗ってる東京メトロ銀座線ってやつは、日本で一番古い地下鉄なんだってさ。
今からおよそ100年前の1927年、日本で初めて地下鉄が走ったんだ。
浅草から上野までのたった2.2kmだけど、地面の下を電車が走るなんて、当時の人たちにとってはまさに驚きだったんだよ!
このすごいことを実現したのが、早川徳次さん。
地下鉄の父と呼ばれた早川さんは、東京の地下に血管のように線路を張り巡らせて、もっと便利で住みやすい街にしようという大きな夢を持っていたんだ。
銀座や新橋とか東京のど真ん中に地下鉄を走らせることをずっと前から考えていたんだね。

“鉄道王”五島慶太の野望
ところが同じ頃、もう一人、東京の地下に目をつけたすごい人物がいたんだ。それが五島慶太さん!
東急グループの社長で、「鉄道王」と呼ばれた、とんでもないやり手さ。
五島さんは渋谷と新橋を結ぶ地下鉄 東京高速鉄道を作り、着々と勢力を広げていったんだ。
そしてね、とんでもないことを考えたんだよ。
早川さんの作った東京地下鉄道と、自分の路線を「ガチャンとつなげちまおう」って!
でも、早川さんはこれをきっぱり断ったんだね。
こうして、静かだけど、お互いの意地とプライドがぶつかり合う、すごいケンカがおっ始まったのさ!
地下で繰り広げられる攻防
五島さんは、ただじゃ起きない。なんと水面下で、こっそり早川さんの会社の株を買い集め始めたんだってさ!
壮大な会社乗っ取り劇だよ。
政治家や大会社の社長を巻き込んで、地下鉄の未来をかけた知恵比べが繰り広げられたのさ。
そして1939年。ついに五島さんが株を手に入れて、浅草から渋谷まで一本でつながる今の銀座線ができたんだ!
早川さんは会社のトップを降りることになっちゃったけど、早川さんが描いた「地下に新しい道を引く」という大きな夢は、ちゃんと東京の街に根付いたんだねぇ。
因縁の2人の夢が重なる日比谷線
その後、戦争になっちまって、鉄道会社はみんな国の管理下になっちゃったんだってさ。
五島さんが手に入れた銀座線も、今の東京メトロの元になった会社に引き継がれたんだ。
時は流れて、今の話さね。
2020年に、銀座線の虎ノ門駅のすぐ近くに、日比谷線の新しい駅「虎ノ門ヒルズ駅」ってのができたんだ。
実はね、この日比谷線には、早川さんと五島さん、この2人の夢の足跡が、ひっそりと隠されているんだよ。
日比谷線って、北は東武線、南は東急線に、一本でつながっているんだね。
東武といやぁ早川さんが鉄道事業を勉強した恩師 根津嘉一郎さんが作った路線。
そして東急は、五島慶太さんが一代で築き上げた、それはすごい私鉄王国さ!
同じ夢を追いかけたのに、ケンカしてちっとも交わらなかった2人が、今では一本の地下鉄の中で、静かに、そしてちゃんと重なり合っているんだから面白いもんだねぇ!
地下から聞こえる来る音は?
2025年は、昭和100年だって言うじゃないかい。
そして2027年には、日本で初めて地下鉄が走って、ちょうど100年になるんだってさ。
地上に出れば、虎ノ門のあたりは高いビルがにょきにょき生えてきて、街の景色はどんどん変わっていくけど、その足元、東京の地下では、100年前の大きな夢が、今もひっそりと生きているんだよ。
地下鉄に乗る時は、スマホばかりいじってないで、ほんのちょっとだけ耳を澄ませてごらんよ。
電車の音だけじゃなくて、なんだか別の音が聞こえてくるかもしれないよ。
それはね、東京って街を作ろうとした、昔の偉い人たちの、熱い夢の足音さ。
その人たちの情熱が、今の私たちの便利な暮らしを、そっと支え続けているんだから、ありがたいもんだねぇ。
どうだい、あたしの話、面白かったかい? 地下鉄に乗るのが、ちったぁ楽しくなったかね?


【虎ノ門駅】港区虎ノ門1-1-21
【虎ノ門ヒルズ駅】港区虎ノ門1-22-12