「商品をしてすべてを語らしめよ」資生堂初代社長 福原信三の信念

資生堂の祖 福原信三 美の哲学

資生堂の歴史を語る上で欠かせない人物が、創業者 福原有信の三男 福原信三です。

1915年、兄の病と早すぎる死をきっかけに、芸術家肌だった信三が若くして事業を引き継ぐことになりました。

絵画や写真に夢中だった信三は、経営者としても独自の美意識を発揮し、資生堂を化粧品会社ではなく「美の文化」を創造する存在へと成長させていきます。

芸術と経営の融合「商品をしてすべてを語らしめよ」

信三は芸術家としての感性を経営に活かしました。1916年には「意匠部」を設立し、若い芸術家たちを迎え入れ、商品のデザインや広告に美を吹き込みます。

彼の信念は「商品をしてすべてを語らしめよ」。言葉ではなく、商品の美しさそのものがブランドを物語るべきだと考えました。

資生堂の象徴「花椿マーク」も信三自身のデザインです。ポスターやパッケージ、店舗設計に至るまで彼が指揮を執り、徹底した美の追求を行いました。

さらに1919年には資生堂ギャラリーを開設、1928年には「資生堂パーラー」をオープンし、文化人が集うサロンとして話題を呼びました。と経営を融合させた信三の手腕は、資生堂を、美の文化を創造する企業へと押し上げたのです。

資生堂五大主義の核 お客様第一主義と小売主義

1924年、株式会社資生堂が誕生。信三は「資生堂五大主義」を掲げ、その中でも「小売（消費者）主義」を重視しました。

• 品質本位主義: 品質を生命とし、常に最高水準を目指す。
• 共存共栄主義: 近代的組織を基盤とし、相互の繁栄を期する。
• 小売（消費者）主義: 消費者志向の経営に徹する。
• 堅実主義: 合理主義を根底とした科学的経営に徹する。
• 徳義尊重主義: 常に相手を尊重し、正しく誠意ある経営に徹する。

お客様を第一に考える姿勢は当時として革新的でした。

1934年には、元祖キャンペーンガール ミス・シセイドウを誕生させ、美容法を芝居形式で伝えるという体験型イベントを展開。

1937年には会員組織「花椿会」を発足させ、今日の「花椿CLUB」へと続いています。

戦争が終わると、信三は「これからは女性が自由に、美しく生きる時代が来る」と確信しました。

女優 原節子を広告に起用。女性たちの新しい生き方を象徴する存在として社会現象を巻き起こしました。

「美しさとは、幸せを願うこと」。150年を超えて資生堂が語り続けるこの真理は、信三が築いた美の哲学そのものなのです。

資生堂は、「美しさ」を通じて、人々の生き方そのものを変えていくブランドです。 

鏡に映る自分が、ふと誇らしく思える。 

「そう、私は女優よ」 

信三が追い求めた美の力は、まさにその瞬間にあるのかもしれません。