“関ヶ原の戦”から“老後2000万円ショック”まで。昔も今も、恐怖で人は動く

老後2000万円

天下分け目の関ヶ原

東西真っ二つ!

1600年。関ヶ原の戦い。東軍の将徳川家康と、西軍の将石田三成が次の覇権を争う天下分け目の一戦です。

後の明治時代に陸軍の教官として招かれたドイツの軍人メッケルは関ヶ原の戦いの布陣図を見せられ「東軍西軍どちらの勝利か?」という問いに「西軍の勝利」と即答したと言われています。

実際には家康率いる「東軍の勝利」となったことはみなさんご存知のところです。

石田三成率いる西軍の陣形は鶴翼の陣。翼を広げて敵を包み込む必勝の陣形です。家康はいかにして西軍有利の状況を覆したのでしょうか?

その答えは、人の心に潜む恐怖と不安です。

天下をたぐり寄せたのは手紙?

家康は、幼少時の人質生活、秀吉政権下での忍従を通じ、人間の心がいかに弱いものかを知り尽くしています。

戦国時代の家康は大名たちに大変恐れられていました。それを見透かしている家康は戦いの前に西軍から東軍に寝返りそうな武将たちに「東軍に寝返るのなら、勝利の折には恩賞を与う」と手紙を書いて送ります。

敗者に着いたら、所領を失い生命の保証もない戦国の世。しかも福島正則、加藤清正、池田輝政、黒田長政ら勇猛果敢な武将たちが、三成の朝鮮出兵後の冷遇に怒り東軍に味方しています。

 「このまま三成殿に着いて大丈夫か?」と不安が生じ海道一の弓取りと讃えられる家康の威光を前に恐怖心が募ります。

家康の書いた手紙は155

家康は西軍の武将たちの心理にある不安に付け込み82名の武将に155通の書状を送りました。武将たちは家康から提示された勝利後の破格の条件に心が揺れ動きます。

合戦前には西軍が有利でしたが、徳川勢の調略が功を奏して、寝返りや、動かずに傍観する武将が続出し、東軍が勝利を収めました。

令和は、2,000万ショックで始まった!

2,000万円の衝撃

令和元年63日に金融庁は「人生100年時代における資産形成」という報告書を発表しました。

報告書では、65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では、毎月平均5万円の収支不足が生じているとし、今後30年の余命があるとすれば、単純計算で2,000万円が必要と試算しました。

毎月平均5万円の収支不足の方が問題なのですが、2,000万円が強調されてしまいました。

いずれにしても「公的年金が、今後シニアライフの収入の柱であることは難しい」という見解です。先々を考えると誰もが不安になってしまいますね。いつの時代にも人間には不安が付いて回ります。

フィアアピールという手法

フィアアピールとは?

フィアアピールという広告表現の手法があります。まず広告を読むターゲットに「恐怖感」や「不安感」を与えます。

次にどうすれば、心の奥底に去来する「恐怖感」「不安感」を解消することが可能なのかを訴求するというテクニックです。

フィアアピール

リスクを回避する方法があるのなら、誰もが関心を持ちます。

 成否を分ける決め手は?

「恐怖感」「不安感」を表現する強弱です。人間の心はつねに快楽と安楽を求めています。ターゲットに、強い恐怖感を与えるメッセージは、見た瞬間は「これは大変だ」と購買意欲が高まります。しかし時間が経過すると、購買意欲が低くなります。

時間が経つと恐怖が薄れる

人間は、迫り来る現実の危機に直面しながらも、強い恐怖感を伴うメッセージは、記憶していることが苦痛だからです。人間には「忘れてしまいたい」という無意識の意識が働きます。

ターゲットの心に、強過ぎる恐怖感を与えると、購買意欲が減退してしまいますが、弱い恐怖感のメッセージは、しばらく時間が経過しても記憶に残ります。

フィアアピールのポイント

ターゲットに購買意欲を促すには「豊かな老後を迎えるには、今から2,000万円を目標にコツコツ資産形成しませんか?」というような“弱く柔らかめのフィアアピールが効果的”と言われています。

弱くて柔らかいアピール

フィアアピールを用いたコピーでターゲットに「恐怖感」と「不安感」を抱かせ、その「恐怖感」と「不安感」を、あなたの会社の商品やサービスがどのような方法で、不安や問題点を解消するのかを伝えます。

人は「強い恐怖」によって「行動をさせられている状態」では反感をもってしまい去ってしまいますが、「問題点」の対応を「自分の決定により行動している」と思えれば、長く強く持続します。

 家康の腹の中と三成の教訓

戦国の世、諸大名にとっては家康自体が恐怖の存在です。家康は「我に味方せい」と、武力を以って強要するより、手紙で「拙者を助けて下さらぬか」とやんわり綴った手紙の方が効果があることを熟知していたのです。

それにしても関ヶ原の敗者・石田三成の言うように「人の心、計りがたし」です。

参考資料

隆慶一郎「影武者徳川家康」(新潮社)

池宮彰一郎「島津奔る」(新潮社)

金融庁:人生100年時代における資産形成

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