4つの『P』と4つの『C』を重ねて紐解く体験価値!

マケの門

日本人の消費スタイルの変化

モノより思い出。

日産自動車のミニバン セレナは2021年に発売30周年を迎えます。当時、自動車はハイグレードな車種を所有してステータスを鼓舞するという「モノ消費」の象徴でした。

1991年に登場したセレナは、“家族仕様”を全面に打ち出し、セレナに乗ることによって得られる体験をアピールしました。人々が、所有そのものから、“乗ってどこへ行くか”というコトに価値を置く「コト消費」の時代の到来を象徴する自動車です。

1999年の新型セレナ発売時の「モノ消費からコト消費」への変化を「モノより思い出。 」と7文字で表現したキャッチコピーは、当時の消費者に大きなインパクトを与えました。

モノより思い出。始めよう、新セレナで。

『万引き家族』でカンヌ国際映画祭でパルムドール賞を授賞した是枝裕和(1962-)が演出したCMはシリーズ化され、自動車というモノではなく、セレナに乗ることによって得られる体験(思い出)に価値を見いだす家族のストーリーが映し出されています。

商品から消費者へ〜主役の交代

1950年代の高度経済成長期から90年代前半のバブル末期にかけては、人々が「モノ」を所有することに価値を感じた“商品が主役の時代”でした。

バブル崩壊後、消費者はモノを購入して所有すること自体に価値を感じるのではなく、モノを購入することで得られる経験や体験などのコトに価値を感じます。消費者の価値観の変化に伴いマーケティング戦略も転換が図られます。

「モノが主役の時代」の4P

1950年代、日本は戦後復興に成功し高度経済成長に向け加速します。街頭テレビが人々の人気を博し、白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機が「三種の神器」と呼ばれた時代です。次々に登場する家電製品や自動車などを所有することに価値を見い出す「モノ消費」の時代の始まりです。

この大量生産・大量消費の黄金期を支えたマーケティング・モデルが4Pです。よいモノを作り、マス媒体で告知をすればモノは大量に売れ、人々の欲求を十分に満たしました。

4つの『P』

Product 製品=何を売るか?
Price 価格=いくらで売るか?
Place 流通=どこで売るか?
Promotion 販促=どのように知らせるか?

4Pは、売る立場である企業視点で捉えています。商品の機能がいかに優れているかをアピールすることを重視していることがポイントです。

「消費者が主役の時代」の4C

海外ブランドを身に付けたり高級自動車を購入して、他人と優位性を競い合ったバブル時代を経て、消費は成熟期を迎えます。売るのは商品でなく、商品を使うことによって生まれる体験です。体験に価値を見いだす“コト消費”時代の到来です。

大量生産・大量消費時代のマーケティングを支えた4Pは疲弊します。消費者が主役の時代に合ったマーケティング戦略を構築し直す必要があります。企業視点の4Pを消費者視点に反転させた4Cにアップグレードします。

4つの『C』

Customer Value  価値=消費者にもたらす機能的価値・情緒的価値とは?
Cost  コスト=消費者の関心事である価格・時間・労力とは?
Convenience 利便性=消費者にとっての買いやすさとは?
Communication  対話=企業と消費者双方に互いの声が届いているか?

4Cは、商品の使用を通して消費者の共感を得られるような価値提供のアピールに主眼が置かれています。

4P&4Cを重ね合わせて「体験価値」を創出!

顧客体験を重視したマーケティングの時代の到来

4Cの登場とともに、インターネットが企業と消費者双方に大きな変革をもたらします。日本では1993年11月に商用インターネットが開始されます。

インターネットは、物流や決済をスピーディーにし消費者は利便性を手に入れました。ワンクリックで価格を比較し、ユーザーレビューでの評判を参考にしながらモノを買います。

企業から一方的に発信される情報を受け入れるのではなく、消費者が欲しい情報を探し自分自身の力で獲得した情報に基づいて購買の意思決定をする時代が訪れたのです。

今やマーケティングは企業規模を問わずUX(User Experience) つまり顧客体験を重視した戦略が主流です。消費者は商品を購入するまでのプロセスにも体験(コト)を求めているからです。

リアルかネットを問わず売らなければならないのは商品ではなく、商品の認知から情報収集、比較検討、購入、さらには購入後のアフターフォローという体験そのものです。顧客体験を重視したマーケティングを成功させるためには、企業の視点である4Pと消費者の視点である4Cは、どちらも不可欠な要素です。

4P&4Cはフィルムのネガ&ポジの関係

4Pと4Cは、フィルムのネガとポジのような関係です。どちらが優れているというものではありません。物事には両面があります。2つの視点を重ね合わせて、人々が何を不満に思い、何を嬉しいと感じるのかを分析して、消費者が商品を「知る瞬間」、「買う瞬間」、「使う瞬間」、「ファン(リピーター)になる瞬間」の心理を読み取り、マーケティング戦略を設計することが成功への要諦です。

参考資料
 

フィリップ・コトラー他『フィリップ・コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版)

ヤン・カールソン『真実の瞬間―SASのサービス戦略はなぜ成功したか 』(ダイヤモンド社)

バーント・H・シュミット『経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力』(ダイヤモンド社)