確率思考の戦略論

森岡毅・今西聖貴著、角川書店、定価3,520円

2021年3月31日にUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)は開業20周年を迎えます。

本書『確率思考の戦略論』は、2016年6月に刊行と同時に大きな話題となったUSJのV字成長を成し遂げた森岡毅と、森岡毅をサポートした今西聖貴によるUSJ復活へ向けた戦略論と、具体的な数字の活用法を著した一冊です。

刊行から4年経過した現在も、USJは、入場料を値上げしながら集客増を続けており、この「確率思考の戦略論」は実証されています。

資本主義社会のDNAは人間の「欲」ではないかと私は考えています。

と森岡毅はいいます。さらに

市場構造を決定づけているDNAは消費者のプレファンスである。

といいます。森岡毅は、売上の伸ばすためには、プレファランス、認知、配荷(棚割り)の3点の向上が必要であり、特にプレファランス向上が最優先課題であると説いています。プレファンスとは、消費者の“好み”、”好感度“です。

本書には「M」という記号が頻繁に登場します。1人あたりの購入回数を「M=3」「M=4」と消費者の購入頻度を増やす。つまり購入確率を高めるための戦略が「確率思考のマーケティング」です。

ポジショニングやその差別化は、「M」を増やすためなのです。

ポジショニングと差別化。このマーケティングの要諦を、確率とUSJでの戦略の数学的根拠を用いて立証しています。

2001年USJは”THE POWER OF HOLLYWOOD”、“映画の世界に飛びこもう”をコンセプトにハリウッドの世界を体験できるテーマパークとしてオープンしました。しかし低迷が続き森岡毅が再建を託されます。

「またUSJに行きたい」という消費者の一言のために、森岡毅は、映画にこだわらず、内外の反対を押し切りファミリー層の欲望を刺激する人気アニメやゲームのアトラクションを導入しました。一方でメインの映画は、2014年にスタートした『ハリー・ポッター』の世界を再現した「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が集客の大きな原動力となりました。

この両輪がうまくかみ合い消費者のプレファンスを高めて「M」が増えたのです。

「確率思考」をDNAにして、USJは消費者視点の会社へと変貌したのです。

2015年10月の来場者が約175万人に達し、単月として開業以来最高を記録しました。「東京ディズニーランドを追い抜いた」と当時、大きな話題となったことはあなたも、ご記憶でしょう。

確率思考の戦略は、テーマパークだけでなく、ほぼ全ての企業やカテゴリーで実践可能なはずです。市場構造の核である顧客のプレファンスに集中し、「M」を増やす確率を上げることでビジネスは必ず好転します。

中小企業にとっても、ヒントが掴める1冊です。「数学や数式が苦手だ」と躊躇するあなたも、いかにMを増やすか?、売上の伸ばすためのプレファランス・認知・配荷(棚割り)の3点の向上を理解するだけでも一読の価値があります。