ステルス値上げはインフレの予兆⁉︎ インフレ下でのマーケティング戦略

ステルス値上げ

あれっMサイズのコーヒーを注文したのに、これじゃSサイズだ

みなさんも毎日の生活で、こんな経験をされたことでしょう。

twitter上でも話題のステルス値上げです。

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『物価上昇目標2%』の壁

マーケティング戦略を考える上で、経済情勢の動向を読むことは必要不可欠です。

日銀の黒田東彦(1944-)総裁は、2013年3月20日の就任時に『物価上昇目標2%』を目標に掲げました。銀行が保有する国債を買い取り、世の中にお金を溢れさせる空前の異次元金融緩和は「黒田バズーカ」と呼ばれたのは、みなさんもご存知のとおりです。

団塊世代が75歳を迎える2025年ショックが目前に迫っています。しかし現在まで政府と日銀が掲げる目標は達成されていません。依然として『物価上昇目標2%』の壁は立ちはだかります。

いま話題のMMT理論

“自国通貨を中央銀行が発行する政府は高インフレの懸念がないかぎり財政赤字を心配せず必要な財政支出を行えばよい”

いま話題のMMT(現代貨幣理論)です。財政赤字を容認するMMTは物議を醸しています。

MMT理論の提唱者、ステファニー・ケルトン(1969-)の「巨額の財政赤字を抱えているのにインフレも金利上昇も起こっていない日本はMMTの成功例である」という主張は日本でも論議を呼びました。

2019年7月の来日時にケルトンは「日本は財政赤字を気にする必要はなく、消費税の増税は必要ありません」と発言しました。

値上げと消費者心理

国家の発行する法定通貨を国民が信用していることで成り立っているのが、今の経済社会です。

消費者と企業の信頼の下で、成り立っているのが消費社会です。

マーケティング戦略上、露骨に価格を上げてしまうと、消費者の購入離れが発生してしまいます。

製造コストが上昇しているが、販売価格を引き上げたくない。そこで
価格は据え置きで、容量を減らして製造コストとのバランスを調節する。これがステルス値上げです。

量が減っても価格据え置き

しかし2019年春より、ステルス値上げも限界を迎え、一部の企業が値上げに踏み切っています。

私たち生活者の肌感覚ではインフレが静かに進行しているように見受けられます。

インフレ下でのマーケティング

価格から価値への転換

インフレとは需要過多、供給よりも需要が多く、物が高くても売れる状態のことをいいます。

「消費者に今まで以上の価格を抵抗なく払ってもらう」これがインフレ下のマーケティングの課題です。

どれだけ価格を下げられるかという消耗戦になってしまった感のあるデフレ化のマーケティングとは”真逆の発想”が求められます。

価値訴求のマーケティング

企業は、経済環境に左右されることなく、売上そして利益を伸ばしていかなければなりません。消費者にどのような価値を提供し、どのようにして購買意欲を持ってもらうのか?を考えることが必要です。

企業視点で自社のサービスの特徴やメリットだけを謳う「売り一辺倒」のメッセージでは消費者のハートは掴めません。ましてやインフレ環境下で低価格戦略に打って出るのは無謀です。

キットカット受験生応援キャンペーンやネスカフェアンバサダーなど独自のマーケティング手法を生み出してきたネスレ日本社長、高岡浩三(1960-)は「顧客が抱える問題を解決することがマーケティングの役割である」と言っています。

インフレ下では、消費者の悩みを解決したり願望を叶える存在であることを消費者視点で伝えることと、消費者が喜んで高価格でも購入してくれる高い体験価値(ベネフィット)を提供することが大切です。

参考資料

フィリップ・コトラー 高岡浩三『マーケティングのすゝめ 21世紀のマーケティングとイノベーション』(中央公論新社)

黒田東彦『世界を見る目 危機を見る目』

L・ランダル・レイ『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新社)

日本銀行『2%の物価安定目標と長期金利操作付き量的・質的金融緩和』

黒田東彦『デフレの克服:日本の経験と挑戦』

浜田宏一氏が語る「MMTは均衡財政への呪縛を解く解毒剤」
浜田宏一・内閣参与インタビュー