FACTFULNESS

ハンス・ロスリング オーラ・ロスリング アンナ・ロスリング・ロンランド/著 日経BP社、1,980円

85万部を突破し「2020年上期ベストセラー1位」に輝いた『FACTFULNESS』の著者ハンス・ロスリング(1948-2017)は、2012年のTIME誌の「世界で最も影響力のある100人のリスト」に選ばれた公衆衛生学と統計データの権威です。

人間には、物事のポジティブな面よりもネガティヴな面に気付き翻弄されやすい10の本能があり、物事を正しく理解するためには、この本能を克服することが大切であるとハンス・ロスリングは説きます。

1.分断本能 

2.ネガティブ本能 

3.直線本能 

4.恐怖本能 

5.過大視本能 

6.パターン化本能 

7.宿命本能 

8.単純化本能 

9.犯人捜し本能 

10.焦り本能 

マーケティングに関連する本能を一つ挙げると「今すぐ手を打たなければ、取り返しのつかないことになる」と思い込む”焦り本能“です。

この本能は、“数量限定販売”や“入荷まで2か月待ち、予約受付中!”などといったキャッチコピーで、「今買わないと損をする」と消費を喚起する手法に用いられています。

消費者の購買行動に、もっとも影響を与える要因が、「その道のプロ」つまり「権威」の意見です。専門家の推奨の声により、商品の売れ行きは大きく左右します。

本書が、この事実を証明しています。人は、新刊書の広告や帯の権威からの推薦文を見ると価値がある本だと感じます。本書には、これ以上の権威は、存在しないくらいの存在感を示すバラク・オバマ前大統領(1961-)とマイクロソフト社の総帥ビル・ゲイツ(1955-)という世界のリーダー2人が賛辞を寄せています。

ロスリングは、本書の中で世界を正しく理解するためには、その道のプロである権威の意見を聞くことが大切であると説きます。

私は「その道のプロ」を心から尊敬している。専門家の知識に頼らなければ世界を理解できないし、専門家に聞くべきと思っている。

その一方で、「権威」に対し厳しい視線を注ぎます。

その道の『プロ』は、その道のことしか知らない。それに『プロ』とは言っても、自分の専門領域のことさえ知らない人もいる。

さらにロスリングは「権威のいうことは間違いない」と信じてしまう私たちを戒めます。

数字をひとつだけ見せられたら、必ず『それと比較できるような、ほかの数字はないんですか』と尋ねよう。

本書は、あらゆるメディアで賛否両論の声や批評が取り上げられています。

これらの声の中で、目を引いた意見が「ロスリングだって自説を正当化するために都合の良いデータを引用しているのではないか!」という意見です。

確かに本書『FACTFULNESS』に対しても、内容を事実として鵜呑みにするのではなく、懐疑的な視点を向け、さまざまな権威の意見やデータを集め、読み解く習慣を身に付けることが大切ではないでしょうか?

このことこそが、病床で命を削り、遺作として本書を著したロスリングが、私たちに託した遺志なのかもしれません。